ジャガーEタイプを現代技術で再生 イーグル・ナンバー1 精神と構造は変えず 前編

公開 : 2022.03.06 07:05  更新 : 2022.04.14 16:59

イーグル社による慎重な仕事で蘇ったジャガーEタイプ。25年が経過した第1号車を、英国編集部がご紹介します。

オリジナルの精神を維持したレストモッド

アクセルペダルを蹴飛ばすと、普通のジャガーEタイプとは違うことが顕になる。フライホイールが小さいようだ。「軽くしてあります」。カムは?「イーグル社のオリジナルです」。ノーマルの4.2L直列6気筒エンジンより、回転上昇が遥かに鋭い。

それだけではない。パワーアシストのないステアリングで向きを変えるのは、幅225という、Eタイプとしては太いタイヤ。それでも、操舵感が軽く旋回性がすこぶる良い。ノーマル・サイズと比べて、恐らく幅も重さも倍くらいはあるだろう。

イーグル・ナンバー1(ジャガーEタイプ/1995年/英国仕様)
イーグル・ナンバー1(ジャガーEタイプ/1995年/英国仕様)

ステアリングホイールには、ポルシェ911のように情報がクリアに伝わる。フロントノーズへ重いエンジンが搭載されていても、鼻先の動きは軽快。グリップ力にも不足はない。

ブレーキも効く。思い切りペダルを踏むとフロントタイヤがロックするが、効きの強さは調整しやすいから、心配はいらない。

タコメーターを視界に入れつつ、5500rpmまで引っ張る。アクセルを戻すと、アフターファイヤーのパラッパラッという破裂音が放たれる。滑らかにスライドする、4速MTのシフトレバーをゆっくり動かす。

取材日は絶好のEタイプ日和。ただし、このクルマの正式名称はイーグル・ナンバー1だ。

英国に拠点を置くイーグル社は、「オリジナルの精神や信頼性、安全性、パフォーマンスを損なうことなく、Eタイプの個性を保つ」という哲学を掲げ、古いジャガーをレストモッド、現代技術で再生している。

復元されたEタイプを固定価格で提供

今回ご紹介するのは、1966年式のジャガーEタイプがベース。ヘンリー・ピアマン氏とポール・ブレース氏が完璧に仕上げた最初のクルマで、初代オーナーが25年間も大切に乗っているという。

レストモッドされてから5万km近く走り込まれているが、ボディは塗装から数年しか経っていないように艷やか。インテリアのレザーが程よく馴染んでいる。

左から、ポール・ブレース氏とヘンリー・ピアマン氏、ジョン・マクラーレン氏
左から、ポール・ブレース氏とヘンリー・ピアマン氏、ジョン・マクラーレン

オーダーしたジョン・マクラーレン氏は、このEタイプに惚れ込んだ。イーグル社の一員になるほど。

同社を創業したピアマンに話を聞く。「ジョンのクルマは、25年前のわれわれが作った古いイーグルです」。現代技術を用い、当時のジャガーより高水準で、完璧なEタイプを提供するという姿勢を形成するきっかけになった1台だという。

ジョンが初めてレストアされたEタイプ S2ロードスターを手にした頃は、熱心なクラシックカー・ファンではなかったそうだ。むしろ、絶え間なく発生する不具合にうんざりしていた。信頼できるクラシックカーを希望していた。

ピアマンとブレースは、ジョンが排他的なオリジナル信者ではないという考えに後押しされ、一般的なメンテナンスやレストアとは違う手法を導き出した。それが、完全に復元されたEタイプを、新車のように決まった価格で提供するビジネススタイルだ。

新生したイーグル社は1993年にグレートブリテン島の南、イーストサセックス州へ移転。1995年に、ジョンのEタイプを完成させた。HUF 42Eのナンバーを付けた、このクルマだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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