新しい翼を手に入れた日産ブルーバード 英国工場35周年でEVに生まれ変わった「ニューバード」とは

公開 : 2022.03.30 06:05

成長したサンダーランド工場

というわけで、今日の生産ラインを見てみることにした。案内してくれたのは、この工場のベテランで、最近は新型車の生産担当をしているマイケル・ハーカー。今回見学するのは、創業当時から工場内にあるメインの第1ラインと第2ラインだ。

昔の航空写真を見ると、2つの小さな小屋から工場がどのように拡張されたかがわかる。新型コロナウィルスや半導体不足の影響で、生産は1日1000台、8時間2交代制に縮小された。部品保管にかかる費用を抑えるため、すべてが「ジャスト・イン・タイム」で運ばれてくる。つまり、ほとんどの場合、ライン上にある在庫は1時間半分しかないのだ。

日産ニューバード
日産ニューバード    AUTOCAR

リーフのモーターは、鮮やかなオレンジ色のケーブルが目印だ。リーフの製造には10時間かかる。筆者のすぐそばで、部分的に作られた車両が作業場から作業場へとゆっくりと運ばれていく。その静かさには驚かされる。

「わたし達は、自動的に正しいトルクで締め付けるバッテリーガンを使っています。手で締め付ける必要があった昔のエアツールに比べれば、ずっと静かですよ」とハーカーは説明する。

ハーカーはかつて、同僚とともに手を伸ばしたり、下げたり、曲げたり、しゃがんだりと、体力を消耗しながら組み立てていたことを話してくれた。しかし、今は違う。車両がラインを通過するときに、機械で適切な高さに昇降させるのだ。ただ、すべての作業がそうではない。筆者はキャシュカイのダッシュボードの下で、しゃがみこんで手を伸ばす作業員の姿を目にした。「ペダルボックスの取り付けです」とハーカーは言う。「最悪な仕事です」

生産ラインの終盤には、車両に水をかけて漏れがないかを調べるドレンチングブースがあり、エンジンやモーターを搭載するローリングロードが続く。作業員が各車を取り囲んでフィット感と仕上げをチェックし、キャリブレーションエリアで運転支援機能を設定する。最後にアンダーシールベイで下回りの防錆処理が行われる。短い走行テストを経て、メイド・イン・サンダーランドの日産車が工場を後にし、英国北東部の製造業のサクセスストーリーは新たな1ページを刻む。

ニューバードの走りはどんな感じ?

1989年式ブルーバードからニューバードへの改造は、キングホーン・エレクトリック・ビークルズの創設者、ジョージ・キングホーンが指揮をとった。改造プロジェクトは8週間かけて慌ただしく行われた。

リーフから供給されたバッテリーは、一部がモーターとインバーターとともにボンネットの中に置かれ、残りはトランクに収められている。リアの200kgの重量増に対応するため、リアには調整可能なスプリング、また全輪にビルシュタイン製ダンパーが取り付けられている。

キングホーン・エレクトリック・ビークルズの創設者、ジョージ・キングホーン
キングホーン・エレクトリック・ビークルズの創設者、ジョージ・キングホーン    AUTOCAR

ブルーバードは、日産が英国で信頼できるメーカーとしての地位を確立するために作られた、ミドルクラスのファミリーカーだった。しかし、ニューバードの柔らかいシートに座り、キーを回してセレクターノブを「D」に回し(今後ブルーバードのATシフターを装着予定)、ダラムからサンダーランドへ走らせると、快適で質素なクルマだったことを思い出させた。

キングホーンは、1980年代の緩いブレーキとハンドリングに合わせて、モーターを調整している。

カセットプレーヤーに入れたアルバム「Now That’s What I Call Music 15」で、筆者は大いに運転を楽しんだ。実際、電気とシングルスピード・トランスミッションは、ブルーバードの性格に合っている。もちろんアンダーステアは顕著で、ダンパーを少しひねるようにして曲がるが、流れに身を任せれば、ニューバードはシンプルに動いてくれる。

静かすぎるという呟きも聞こえてきそうだが、実はキングホーンは、ミルテック・スポーツと共同でエグゾーストサウンドを開発している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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