新風を吹き込むSUV マセラティ・グレカーレへ試乗 MC20用V6ツインターボで530ps 後編

公開 : 2022.04.05 08:26

アルファのプラットフォームに、スーパーカー用エンジンと上質なレザーで仕立てた新型SUV。英国編集部が評価しました。

BMW M3をも凌駕する加速力

マセラティグレカーレを発進させてみる。最高出力530psを発揮する3.0L V6ツインターボは、低回転域から豊かなトルクを発生。ターボラグも殆どない。極めてパワフルで、野蛮なスピードでの走行も朝飯前でこなせる。

サウンドは、スポーツかコルサ・モードを選択すると、マセラティへ期待通りのドラマチックさが現れる。レッドラインは7000rpmを少し超えた辺り。荒々しい咆哮を放ちながら、痛快に吹け上がる。

マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)

マセラティによれば、0-100km/h加速は3.8秒。これは、最新のBMW M3をも凌駕する加速力となり、フルスロットルを与えた印象では、その数字に偽りはなさそうだ。

目が覚めるようなダッシュをアシストするのが、瞬間的に変速をこなす8速AT。コルサ・モードを選ぶと容赦もなくなり、シフトアップの度にヘッドレストへ後頭部をぶつけてしまう。

ブレーキのチューニングも素晴らしい。低速域では扱いやすく、高速域では漸進的で強力。狙った通りの制動力を引き出せる。

ステアリングホイールの反応は、正確でクイック。程よい重み付けで、不安感なくコーナーへ飛び込んでいける。

今回の試乗車はスタッドレスということで、フロントタイヤのグリップ力が不足気味だったが、リアタイヤも同様。積極的に電子制御のリミテッドスリップ・デフが機能し、軽くリアを流しながらの鋭い脱出も難しくないと感じた。

サマータイヤなら、グリップは一層高まるはず。かといって、自由に振り回せるシャシーの楽しさも、減じることはないだろう。これはマカンにも勝るように思う。

高めたいサスペンションの処理能力

反面、路面を問わない岩のような落ち着きや、秀逸な姿勢制御という点では届いていない。グレカーレ・トロフェオには、エアサスペンションとアダプティブダンパーが標準装備だが、コーナリング途中の凹凸などを完全には処理しきれないようだ。

条件によっては、若干の不安定さを感じさせることがあり、ふわりと浮き上がるような挙動を示していた。その瞬間、2027kgと軽くないSUVの車重も実感させられる。

マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)

コルサ・モードを選ぶとサスペンションが引き締まる一方で、ツギハギの多い都市部の路面のような、細かな乱れを車内へ伝えてしまう。試乗車の場合は、その振動へ釣られるように、美しい内装の一部からカタカタと音が出ていた。

アダプティブダンパーをソフト側へ戻せば、ベースに一定の硬さは残るものの、優しく路面をいなしてくれる。それでも、窪んだマンホールや橋桁の継ぎ目などは、少々苦手な様子。上質で平穏な移動空間を乱すように、振動が届いていた。

とはいえ、穏やかになったグレカーレの質感は、小さなロードノイズや風切り音と相まって、印象的な車内を一層心地良いものにしてくれる。マセラティらしく、グランドツアラーとしての能力は高いといえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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