優しいクルージングがベター ポルシェ911 タルガ4 GTSへ試乗 ターボのサスと480ps

公開 : 2022.05.05 08:25

7500rpmまで回したいという欲求

豊かでハードエッジなエグゾーストノートを奏でてくれる、GTSエグゾーストも素晴らしい。ルーフを閉じた状態でも、車内で聞こえてくる音色はまったくの別モノだ。

GTSとしてパワーアップしたエンジンは、レッドライン手前の1000rpm付近から吹け上がりの鋭さが違う。これまで以上に、7500rpmまで回したいという欲求を抑えることが難しい。

ポルシェ911 タルガ4 GTS(英国仕様)
ポルシェ911 タルガ4 GTS(英国仕様)

グリップ力は打ち破ることが困難なほど高く、トラクションは確実。ステアリングは精度が高く、GTSサスペンションが機敏な回頭性をアシストする。路面の状態が良いとはいえない英国郊外の道でも、乗り心地は落ち着いているとさえ感じる。

0-100km/h加速は3.5秒と迅速。小気味よくシフトチェンジを繰り返す、デュアルクラッチATの仕事ぶりも見事。そんな刺激的なシャシーとパワートレインでありながら、1600rpm程度の回転数で穏やかに流すのも、また一興だ。

ただし、増えた車重のデメリットがまったくないわけではない。クーペのカレラGTSの方がタルガ4 GTSより約140kgも軽いという事実を、コーナリングやサスペンションの動作に感じ取れる。

GTSのシャシーを得たことで、より優れた操縦性を味わうことを可能としている。しかし、軽くないタルガトップを動かすことにも、シャシーの能力は使われる。喜びはクーペには届かないし、ペースが高まるほどに自然さも薄まる。

適度な速度でのクルージングがベター

やはりタルガトップの911は、ルーフを開き気持ちの良い天気を味わいながら、適度なスピードでクルージングするのがベター。本来のGTSが目指すような、積極的にコーナーを縫うようなスタイルとは違う。

もし筆者なら、タルガ4 SからGTSへアップグレードするために必要な金額を、理想のボディカラーやオプションに費やすだろう。GTSの場合、装備は一層充実し、価格価値としても悪くないけれど。

ポルシェ911 タルガ4 GTS(英国仕様)
ポルシェ911 タルガ4 GTS(英国仕様)

これまでGTSというグレードは、ある種のオプション・パッケージのような存在だった。だが992型では、訴求力のある個性的なグレードとして完成している。カレラSとGT3との、絶妙な塩梅の存在として。

一方で911の場合、タルガとGT3とは両極端な性格付けにあるともいえる。同じDNAを宿していても、モデルとしては大きく異る。GTSとしてその間を取り持つことは、まだ少し難しいようでもある。

ポルシェ911 タルガ4 GTS(英国仕様)のスペック

英国価格:12万6760ポンド(約2117万円)
全長:4519mm
全幅:1852mm
全高:1297mm
最高速度:307km/h
0-97km/h加速:3.5秒
燃費:8.9-9.1km/L
CO2排出量:251g/km
車両重量:1685kg
パワートレイン:水平対向6気筒2981ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:480ps/6500rpm
最大トルク:57.9kg-m/2300-5000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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