【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #26】1976年ポルシェ935「世界選手権を制するためのレーシングモデル」

公開 : 2026.07.18 09:11

世界的な人気モデルとして支持され、サーキットでも数えきれぬ栄光の記録を刻んできたポルシェ。土日祝日の午前9時11分に公開する、そんなポルシェの足跡を膨大なアーカイブと共に振り返る連載です。#26は『1976年ポルシェ935』です。

1976年ポルシェ935

FIAは低迷していた国際メーカー選手権を、1976年からグループ5の特殊GTマシン(シルエット・フォーミュラ)で競うことにする。あわせて3.0L以下のグループ6プロトタイプ・マシンによる世界スポーツカー選手権も併催され、スポーツカー/GTのレースを盛り上げることを目論んでいた。

ポルシェは国際メーカー選手権を制するために935を送り出す。またル・マンなどの広告効果の高いビッグレースで総合優勝を狙うプロトタイプ・マシンとして936を用意する周到さだった。あわせて北米でのIMSA GT、ドイツ・レンシュスポルト・マイスターシャフト(DRM)など、さまざまなグループ5『シルエット』レースに参戦するために製作された。

1976年シーズンのポルシェは、国際メーカー選手権を制するために935(左)と、広告効果の高いビッグレースで総合優勝を狙うプロトタイプ・クラスの936で挑戦した。
1976年シーズンのポルシェは、国際メーカー選手権を制するために935(左)と、広告効果の高いビッグレースで総合優勝を狙うプロトタイプ・クラスの936で挑戦した。    ポルシェ

グループ5の車両規定では、ベースとなる市販車の形状を残すことが要求され、前方から見て車の基本的なシルエットが変わらず、ドアパネルを含むキャビン部分とボンネット形状、ホイールアーチラインの変更は許されていなかった。

その代わり大型のフロントスカートや太いタイヤを収めるためのオーバーフェンダーの追加は許されていた。リアウイングの大型化も認められていたが、前述の規定にある前方から見た基本的なシルエット内に収めるために複雑な形状になっていた。

排気量をスケールダウン

エンジンは、934の3.0Lではターボの過給機係数×1.4を乗じると4リッター越のクラストなり、最低重量が重くなってしまうというデメリットがあった。

そこで935では4リッター以下のクラスにするため排気量を2808ccにスケールダウンすることで対応。巨大なKKK製ターボチャージャーが搭載され、ダッシュボード上のノブでブースト圧を1.35~1.55 barに制御でき、これにより出力は通常の550 hpから、スプリントモード時の650 hpまで変化させることができた。

開発用の935プロトタイプ。RSRと同じオーバーフェンダーが備わり、排気系の取り回しも不自然だ。右に立つのは開発責任者のノルベルト・シンガー。
開発用の935プロトタイプ。RSRと同じオーバーフェンダーが備わり、排気系の取り回しも不自然だ。右に立つのは開発責任者のノルベルト・シンガー。    ポルシェ

930ターボのボディシェルが採用され、アルミニウム製のロールケージによって剛性を向上。フロントおよびリアセクションはグラスファイバー製で、リアには15インチ幅のタイヤを覆う大きく張り出したフェンダーが装着された。プレクシグラス製のウインドウや、各部の軽量化に成功する。4リッター以下クラスの規定重量である970 kgを下回ったため、重量配分を考慮してバラストを積むことにより対応した。

サスペンションとブレーキは、コイルスプリング、調整可能なアンチロールバー、大径のベンチレーテッド・ディスクなどを含め、大幅にアップグレードされた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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