V12との惜別は強烈に アストン マーティンV12ヴァンテージへ試乗 700psと76.5kg-m

公開 : 2022.05.19 08:25

V8ヴァンテージを超えるコーナリング性能

最新V12ヴァンテージの試乗のため、アストン マーティンが用意してくれたのは、開発でも用いられた英国シルバーストーン内のストウ・サーキット。周辺の一般道も運転が許された。

サーキットを飛ばすと、適度な重さのステアリングホイールから、正確さが伝わってくる。姿勢制御は一層引き締められ、増えた車重をしっかりシャシーが受け止めている。

アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)

コーナリング性能は、既に優秀なV8ヴァンテージより上。とても鋭い。ニュートラルに近いハンドリングバランスと、驚くほどの高速安定性を備えつつ、コーナーの出口ではアクセルペダルの加減でスタンスを調整できる余裕もある。

V12ヴァンテージは、サーキットをタイトに周回したいと訴えてくる。制動力やグリップ力は極めて甚大。何周でも全開で駆け回れそうだ。公道では許されない速度で、驚くようなラップタイムを刻める。V12ヴァンテージの最高を味わえる。

それでいてV型12気筒エンジンは、シャシーの落ち着きを打ち砕けるという、崇高なオーラも漂わせている。シャシーが手に負えないような、巨大なトルクを簡単に解き放てる。

リアには、機械式のリミテッドスリップデフが組まれている。トラクション・コントロールをオフにすれば、タイトコーナーの出口で、リアタイヤから盛大な白煙を巻き上げることも容易い。

最後を締めくくる強烈なヴァンテージ

公道へ出てみると、日常的な速度域でも、驚くほどしなやかな乗り心地を得ている。しかし、轟音を放ちながらの怒涛の加速と、容赦なく引き締められた減衰力特性で、穏やかな気持でいることは難しい。

V12ヴァンテージは、気を使って運転しなければ、簡単に野蛮さが顔を出してしまう。だが、それで構わないとは思う。

アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)

数年前のヴァンテージ GT12が搭載するV型12気筒が奏でた心へ響く雄叫びは、ターボチャージャーによってかき消されている。獰猛な動力性能が生むドラマチックさでは、それには届いていないだろう。

かつてないほどパワフルな、アストン マーティンV12ヴァンテージ。サーキットでの能力は過去最高でも、パワフルで重たいエンジンが体験を若干濁らせているような印象も受ける。

過去のベビー・アストンは、少々パワー不足だった。だが最新版は、有り余るパワーを得てしまったのかもしれない。700psの最高出力を備えていて、極めて速くても、筆者個人としては1番のお気に入りとまでは感じなかった。

究極のヴァンテージと呼ぶべきかどうかは、悩ましいところだ。V型12気筒エンジンの最後を締めくくる、強烈な印象を残すための存在なのかもしれない。

さて、V12ヴァンテージの英国価格は26万5000ポンド(約4426万円)。V8ヴァンテージより、11万5000ポンド(約1920万円)お高い。生産数は333台に限定されているが、注文の受け付けが始まる前に、すべての納入先が決まってしまったという。

アストン マーティンV12ヴァンテージ(英国仕様)のスペック

英国価格:26万5000ポンド(約4426万円)
全長:4514mm
全幅:1960mm
全高:1275mm
最高速度:321km/h
0-97km/h加速:3.5秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1795kg
パワートレイン:V型12気筒5204ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:700ps/6500rpm
最大トルク:76.5kg-m/1800-6000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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