最強は? バイデン大統領/プーチン大統領/習近平主席の「専用車」 比べてみた

公開 : 2022.06.08 06:05

露専用車は国家プロジェクトで誕生

プーチン大統領の専用車「アウルス・セナート」はロシア連邦政府からの命を受け2012年に始まった。

モスクワを本拠地とするロシア政府のエンジニアリングセンター「NAMI」(ロシア連邦国家科学センターFSUE)によって開発されたロシア産のプレミアムカーだ。

NAMI(自動車研究)が開発したセナートはプーチン大統領も開発に関わったとされる。
NAMI(自動車研究)が開発したセナートはプーチン大統領も開発に関わったとされる。    Kremlin.ru

プーチン大統領のためにつくられた大統領専用車といってよいだろう。

2018年5月7日、プーチン大統領4回目となる大統領就任式で、この時、初めてアウルス・セナートのリムジンとセダンが一般に公開された。

海外での使用は2018年7月16日にフィンランドの首都ヘルシンキで開催されたロシアと米国の首脳会談の時であった。

セナートにはプーチン大統領が乗るリムジンのほか、セダン、ミニバン、SUV、カブリオレなどの派生車種がある。

ロシアにおける大統領専用車といえば、旧ソ連時代に使われた「ZIL-41052」が有名だが、エリツィン以降2000年初頭からの10数年はメルセデス・ベンツSクラスセダン(W140、W220、W221など)が大統領車として使用されてきた。

なお、セナートがプーチン大統領の専用車として日本を訪れたのは2019年6月にインテックス大阪にて開催された「G20」の時。

アメリカや中国と同様、ロシアから専用機に載せて運ばれてきた。

セナートの肝心な「装甲」はどうだろうか?

キャデラック・ワン」ほどの詳細は明らかにされていないが、防弾装甲が施されており、床下には耐爆装置、銃撃されても走り続けられる頑丈な「ランフラット」ゴムタイヤ、攻撃的な武器を備え、外部から化学兵器などによる攻撃を受けた際には室内は瞬時に外の大気から遮断され、完全に内部循環型の酸素供給がおこなわれる。

完全に水中に沈められたとしても大統領の生命を確実に守る装備も搭載されているという。

装備の合計は5t前後にもなり、車両総重量は商用バスに匹敵する7t以上。重量でいえば7-9tのビーストとほぼ同様だ。

また、セナートには一般に販売されるセダンもあり、こちらの全長は5631mmであるのに対して、大統領専用車の全長はプラス約1mの全長6700mmにストレッチされている。

ロシアの国営メディアによると、セナートの最高速度は約160km/h(民間向けは250km/h)、0-100km/hは12.5秒(同じく6秒)とされている。

ビーストよりは最高速度、0-100km/hが1.5倍程度速いという感じだ。

標準モデルにはポルシェ社と共同開発された(と報告されている)4.4L V8ガソリンツインターボエンジンを搭載しており、モーターの出力と合計で598.2ps/90.7kg-mを発生するが、大統領専用車にはNAMIが開発した6.6LのV12エンジンを搭載し推定出力は857psとされている。

最強は米大統領の「ビースト」?

冒頭に書いたようにこのたび、バイデン大統領とともに来日したビーストは2018年9月トランプ大統領時代にデビューしている。

一見、セダンをストレッチしたリムジンのように見えるが、実は、非常に頑丈なシボレー・コディアック(またはGMCトップキック)というトラック用シャシーの上にキャデラック顔の重装甲ボディが架装されている状態で「戦車のフレームに乗ったキャデラック」と称される。

ビーストの中で密談するオバマ元大統領と、当時、副大統領だったバイデン大統領(右)。
ビーストの中で密談するオバマ元大統領と、当時、副大統領だったバイデン大統領(右)。    Official White House Photo by Pete Souza

中国やロシアの専用車と同じような装甲をしていても、ベースそのものがまったく異なる強度を与えられていることからも、やはり世界最強の専用車はアメリカ大統領専用車だと考えてよさそうだ。

ボディパネルは高強度鋼、アルミニウム合金、チタン合金、セラミックでできており、考えられるあらゆる装甲が施され、攻撃を受けた時に対処できるさまざまな装備を搭載している。車両重量は7-9t超とも。

3か国の首脳専用車の中ではけた違いに高額で、1台あたり現在のレートでは2億円近い。

現行ビーストは同じ仕様のものが12台つくられており、2014年にGMと17億円以上の契約を結んで計画がスタートし、約4年の歳月をかけて完成したのが現在の3代目ビーストになる。

窓ガラスは5層の防弾仕様となっており、大統領が座る後部座席の窓ガラスは厚さ最高13cm。

窓というよりは、もはやガラスの塊のような分厚さだ。

もちろん、開閉はできない。唯一開放できるのは運転席側の窓ガラスだが、それでもわずか6-7cmだけである。

ドアの厚みは平均で20cm以上。その重量は小型ジェット機並みである。

実際、表に出ている情報以外にも当然トップシークレットの装備が備わっているだろう。

ちなみにアメリカ大統領専用車はおよそ8年ごとに、新しいモデルがつくられる。

では、役目を終えた大統領専用車はどうなるのか?

これは、同時に作られた予備車など含めすべてが完膚なきまでに破壊される。

理由は大統領専用車の情報がわずかでも漏れないようにするためだ。

次期ビーストの登場は2025~26年頃となる予定で、米国メディアは次期ビーストが「EV」になると予想している。

果たして7tとも9tともいわれるキャディ顔の戦車を100km/h以上で走らせられるモンスターEVがあと3~4年後に完成しているとは、到底考えられないが………。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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