懐かしのイタリアン・ロードスター アルファ・ロメオ・スパイダー & フィアット・バルケッタ 前編

公開 : 2022.07.30 07:05

マツダ・ロードスターに負けじと魅力的だった、イタリアン・ロードスター。英国編集部が懐かしい2台を振り返ります。

プラットフォームを共有した2台

自動車エンジニアやデザイナーにとって、新しいスポーツカーを任されるほど幸せな仕事はないかもしれない。そう考えると、1980年代のアルファ・ロメオフィアットに在籍していた人たちの気持ちは、晴れやかとはいえなかっただろう。

フィアットのミドシップ・スパイダー、X1/9の生産は1982年にカロッツェリアのベルトーネ社へ移された。アルファ・ロメオには、105シリーズの進化版といえるスパイダーが残っていたものの、その起源は1966年の124 スポーツ・スパイダーにまで遡った。

ブルーのフィアット・バルケッタと、レッドのアルファ・ロメオ・スパイダー(916型)
ブルーのフィアット・バルケッタと、レッドのアルファ・ロメオ・スパイダー(916型)

アルファ・ロメオはフィアット傘下に加わり、独自の勢いを失っていた。トリノの巨人、ファット自身も経営には苦しんでいた。だからこそ、そんな状況を打開するように、スタイリッシュなオープン・スポーツカーが誕生したように思う。

フィアットのバルケッタと、アルファ・ロメオの916型のスパイダーは、コンパクト・ハッチバックのティーポ用に開発されたタイプ2プラットフォームを共有していた。トリノの先進的なアイデアと、デザインの才能も一緒に。

小さなイタリア製スポーツカーに飢えていた当時のファンは、1995年に発売された2台へときめいたことだろう。英国へ当初導入されたのは、左ハンドル車だったとはいえ。

フィアット・バルケッタの英国価格は1万4000ポンドで、欧州本土の価格と比べてかなり高いものだった。その結果、少なくない数が並行輸入で英国へ入り、現在も正規輸入車より残存数は多い。

クリス・バングルも関わったスタイリング

小さなフィアットのボンネット内に搭載されたのは、1.75Lの4気筒エンジン。5速MTが組み合され、色っぽいオープンボディを軽快に走らせた。

ダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)の16バルブで、可変吸気バルブタイミングを備え、英国仕様では最高出力131psと最大トルク16.7kg-mを発揮。不足ない活気を与えていた。

フィアット・バルケッタ(1995〜2005年/欧州仕様)
フィアット・バルケッタ(1995〜2005年/欧州仕様)

サスペンションは、プントにも似た独立懸架。フロントがマクファーソンストラット式、リアがトレーリングアーム式を採用し、独自のチューニングを得ていた。アンチロールバーも装備されている。

そんなバルケッタが一際注目を集めた理由が、魅惑的なスタイリング。後にBMWで活躍するデザイナーのクリス・バングル氏のほか、アンドレアス・ザパティナス氏とエルマンノ・クレッソーニ氏による共同プロジェクトで、情熱的に進められた。

当初から従来の型にはまらない、新しいデザインが目指されていたという。検討用のクレイモデルが作られ始めたのは1991年。優雅に曲線を描くフォルムだけでなく、ドアハンドルやワンピース・ヘッドライトなど、繊細なディティールも実現されている。

一方、インテリアデザインを手掛けたのは、若きアレッサンドロ・カヴァッツァ氏。バルケッタで頭角を現し、アルファ・ロメオのデザイン部門を率いるポジションへ抜擢されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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