BEV変革期の最前線にある キアEV6 GTへ試乗 ツインモーターで585ps 航続423km

公開 : 2022.08.18 08:25

制御技術を誇示するドリフト・モードも

BEVでは一般的だが、システム合計の585psを発揮したフル加速を味わえるのは、最もアグレッシブなドライブモードを選んだ場合のみ。EV6 GTではGTモード時となる。ノーマルとスポーツ・モードでは466ps、エコ・モードでは292psを引き出せる。

EV6 GTでは、アクセルレスポンスを穏やかにチューニングしたとキアは説明する。確かに、GTモードでも発進直後や緩やか。エコ・モードではワンテンポ置くような印象を受ける。

キアEV6 GT(欧州仕様)
キアEV6 GT(欧州仕様)

それでも、驚くほど速い。モードを問わず、アクセルペダルを踏み込めば強力な推進力が生まれる。見た目はクロスオーバー風のEV6だが、EV6 GTの走りはマッスルカー的だ。

乾燥した路面でも、GTモード時は右足の操作次第でリアタイヤがトラクションを失いかける。必要なトルクを左右のタイヤへ分配できるリミテッドスリップ・デフを装備し、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sタイヤを履いていても。

このGTモードには、BEVとしては珍しくドリフト・モードも備わっている。車重2tを超えるEV6 GTで、派手に白煙を巻き上げるパフォーマンスを楽しみたい人は限定的だろう。恐らく、キアの駆動用モーターの制御技術を誇示するためだと思う。

試乗では滑りやすい路面のスキッドパンで、実際に試してみた。システムが巧みにトラクションを制御し、狙い通りにドリフト状態を維持できた。かなり深いアングルで。

操縦性も乗り心地の快適性も優秀

アクティブLSDは、カーブの連続する区間でラインを保ち、安定性や流暢さを高める方向に設定が振られている。トルクを左右のタイヤ間で分配し、リア寄りの操縦特性を活かすことで、鋭い身のこなしを披露するよりも。

サスペンションは引き締められているが、ソフト寄り。ノーマル・モードを選んでいると、コーナーリング時のボディロールは小さくない。

キアEV6 GT(欧州仕様)
キアEV6 GT(欧州仕様)

アダプティブダンパーをハード側に調整しても、しなやかさは残る。乗り心地の洗練性は秀でており、かなりの高速域でも長距離を快適に移動できるだろう。

ステアリングはダイレクトで、反応はリニア。恐らく、グリップ力に長けたタイヤの恩恵だ。ただし、電動パワーステアリングはドライバーの望むフィードバックを消している。GTモードを選んでも、ステアリングは重くなるだけに過ぎない。

回生ブレーキは、ステアリングホイール裏のパドルで強さを調整でき、制御具合も良好。一方で、ブレーキペダルは重め。回生ブレーキから摩擦ブレーキへの移行は好感触だが、極低速域からの減速時には急に止まるような感じを受けた。

いずれにしても、EV6 GTの操縦性は優秀。キア・スティンガーGT-Sの落ち着きのある動的能力を、BEVへ与えることに成功している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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