見た目は60年代風、中身は未来 EVになった初代フォード・マスタング 生産施設に潜入

公開 : 2022.08.16 06:05

英国のチャージ・カーズ社は、フォードから初代マスタングのデザインライセンスを取得し、レトロな外観のEVを開発しました。一体、中身はどんなクルマなのか。納車に向けた準備が進められる生産施設を訪ねました。

現代に蘇ったポニーカー

1967年の初代フォードマスタングを電動化したエレクトロモッド車両を製造・販売できるのは、ほぼ間違いなく英国だけだろう。

チャージ・カーズ(Charge Cars)社のマスタングをエレクトロモッドと呼ぶのは少し控え目すぎるかもしれない。これは、1968年のスティーブ・マックイーン出演の映画『ブリット(原題:Bullitt)』で有名になった初代マスタングを、徹底的に再設計し、デザインを研ぎ澄まし、高級なEVにしたものだ。

英国の小さな会社が、1960年代のクラシックカーをEVとして蘇らせた。
英国の小さな会社が、1960年代のクラシックカーをEVとして蘇らせた。

米国から輸入したスチール製モノコック、英国製のカーボンファイバー製ボディパネルとインテリア、英国製の最新型クアッドモーター・パワートレイン、そして英国で設計・製造された新しいサスペンションを装備している。

このエレクトリック・マスタング(Electric Mustang)は、欧州連合(EU)の衝突試験や照明および視界に関する規制に準拠して開発されている。

「わたし達は常に最善の道を歩んできました」と、チャージ・カーズ社のチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)であるマーク・ロバーツは言う。

さまざまな規制、設計、エンジニアリング、コンポーネントを包含して1台のクルマを作るには、ソフトウェアやハードウェアだけでなく、現代の英国自動車産業が持つ総合的な技術が必要だ。実際、開発チームを率いるロバーツは、マクラーレンで30年のキャリアを積んだベテランである。

グループ会社で技術共有

チャージ・カーズ社のスタッフにはマクラーレン出身者が多く、F1や世界耐久選手権といったレースチームで活躍した人物もいる。

ロバーツはこの85人のチームのリーダーであり、会社を統括するCEOのヴァディム・シャガリエフは、音楽ストリーミング事業を立ち上げたロシアの起業家である。シャガリエフは英国のEVメーカー、アライバル・グループの創業者兼CEOであるデニス・スヴェルドロフとのつながりで、この国でチャージ・カーズ社を率いることになった。

チャージ・カーズ社のスタッフたち。中央がマーク・ロバーツCCO。
チャージ・カーズ社のスタッフたち。中央がマーク・ロバーツCCO。

アライバル・グループは、2015年に設立された新興企業で、電動の小型商用車やバン、バスなどを手掛けている。

1960年代のマッスルカーと宅配便のバンでは、ずいぶん違うように思えるかもしれないが、バッテリーセルやモーター、エンジニアリング制御、そしてBEV技術のブレークスルーを目指すという野心を共有している。

また、エレクトリック・マスタングと、配車サービス事業を行うウーバー社と開発中の自動運転タクシー「アライバル・カー」との間には、密接な関係がある。

「ハードウェアとソフトウェアはアライバルと非常によく似ていますが、チャージ・カーズは全く異なる独自の目標を持つ会社です」とロバーツは言う。「実際には、当社は彼らのために技術の一部をテストしており、いくつかの分野では我々の方が先行しています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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