待ち遠しいストレート 比ではない興奮度 シェルビー・マスタング GT MG Xパワー SV(2)

公開 : 2025.07.26 17:50

フォードのV8を積むXパワー SV TFとイメージ共有しつつ好戦的な雰囲気 初代の容姿と重なる5代目マスタング 40年越しにシェルビー復活 同エンジンを得た同期の2台をUK編集部がご紹介

パワーで並ぶマスタング GTとXパワー SV

レーシングハンドリング・パッケージが組まれた、シェルビー・マスタング GT。ピンを外してボンネットを持ち上げると、コーン状のエアクリーナーが伸びた、自然吸気の4.6L V8エンジンが姿を表す。

ECUとマフラーは専用品で、最高出力は標準のシェルビー仕様から19ps増しの323psへ上昇。リアアクスル・レシオがショート化され、加速性能も引き上げられている。

シェルビー・マスタング GT(2007〜2008年/欧州仕様)
シェルビー・マスタング GT(2007〜2008年/欧州仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

偶然にもこの数字は、同じ4.6L V8ユニットを積むMG Xパワー SVと肩を並べる。マスタングのチューニングで有名なアメリカのラウシュ社によって、324psを得ている。

ハーネスを避けてバケットシートへ腰を下ろし、キーを回すと電源が入る。だが、エンジンが始動しない。オーナーにサウンドを聞かないのかと促され、周囲を観察し、センターコンソール上の印のないスタートボタンを見つけた。

ガタガタきしむ詰めが甘いインテリア

Xパワー SVのキャビンは、少し詰めが甘い。デザインは悪くなく、高級感あるレザーで包まれているものの、品質が今ひとつ。走り出すと内装がガタガタときしむ。グローブボックスやドアのハンドルはクロームメッキだが、質感は高くない。

運転姿勢も不自然だろう。ペダルの位置は右へオフセットし、クラッチペダルだけ手前側に飛び出し、左右の足を同じように伸ばせない。シート後方には荷物用の空間。全長4480mm、全幅1900mmというサイズの割に、広々とした印象は薄い。

MG Xパワー SV(2003年~2007年/英国仕様)
MG Xパワー SV(2003年~2007年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

マスタング GTは、人間工学が素晴らしく、インテリアデザインの統一感は高い。反面、プラスティック然とした領域が広い。3スポークのステアリングホイールは握りやすく、1960年代風のメーターパネルは、カラーを選べるバックライトで灯る。

ダッシュボード上に、シェルビーのロゴ。クロームメッキ・トリムが各部を引き締めるが、通常のマスタングと大きな差はない。比べると空間が広々としていて、リアシートは使い勝手が良さそうだ。

ストレートを待ってボディを打ち出す

全長は4775mmと長く、ピラーが太く、大柄に感じられる。それでも、サイズは現行のBMW M4と同等。感覚を掴めば、カーブが連続する裏道をハイスピードで駆け巡れる。

ステアリングホイールは適度に重く、フィードバックが鮮明で、反応は正確。操る自信が湧いてくる。しかし、リジットアクスルをパナールロッドで支えるリアサスペンションは、旋回中に凹凸の影響を受けやすい。

手前からシェルビー・マスタング GTと、MG Xパワー SV
手前からシェルビー・マスタング GTと、MG Xパワー SV    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

カーブでの速さは追求しにくいものの、ストレートを待ってボディを打ち出す、マスタングらしい性格とは調和する。巨大なトルクとサウンドを放出する、下ごしらえだ。

挙動は終始予想しやすく、エンターテインメント性は高い。パワフルなV8エンジンへの入門モデルとしても、好適に思える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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