従来のクルマっぽくない メルセデス・ベンツEQE 350+へ試乗 Eクラス相当の上級BEV

公開 : 2022.08.31 08:25

外界から距離を置いたハイテク満載サルーン

ドライビングポジションは、フロア下に敷き詰められた駆動用バッテリーのおかげで高め。シートのサポート性は、Eクラスに及ばない。視点はクロスオーバーのようでもあり、低い運転姿勢を懐かしむ可能性はある。

車内はセンターコンソールが肉厚で、ウエストラインが高いためフロントガラスも小ぶり。空間的なゆとりは感じにくいようだ。

メルセデス・ベンツEQE 350+ AMGライン(英国仕様)
メルセデス・ベンツEQE 350+ AMGライン(英国仕様)

フロントシート側は、シンプルでゴージャスなダッシュボードを眺められる。MBUXインフォテインメント・システムも優秀といえる。

リアシートに腰を掛けると、広さはEセグメントのサルーンというより流麗なグランドツアラーに近い。荷室容量も大きいとはいい難く、多くのユーザーにとって実用性で勝るのはEクラスだと感じられるだろう。

一方で、喧騒の外界から距離を置いたハイテク満載のサルーンを運転したいと考える人にとって、EQEは魅力的に映るはず。リアシートは可倒式で、長い荷物も積めなくはない。

後方視界は今ひとつ。スーパーカーのフェラーリ296 GTBと比べても、劣勢といわざるを得ない。このサイズのサルーンとして、改善を求めたいところではある。

既存の概念を超えた新しい移動手段

ドライビング体験は、全体としては優れている。操縦性は正確といえるものの、長いホイールベースが与えられた後輪駆動のサルーンとして、バランスが秀でているわけではない。それでも、洗練性は素晴らしい。

ブレーキングの感触は、車重が2.3tもあることを考えれば、もう少し明瞭さがあっていい。全体的な動的能力は、英国価格7万3450ポンド(約1211万円)のモデルとして、平均よりは上にある。

メルセデス・ベンツEQE 350+ AMGライン(英国仕様)
メルセデス・ベンツEQE 350+ AMGライン(英国仕様)

ただし、ほぼ同じ英国価格が与えられたポルシェタイカンのエントリーグレードの方が、ドライバーズカーという点では1つ上の水準に仕上がっている。ツインモーターのAMG EQE 53なら印象を高めるはずだが、逆転することはないだろう。

駆動用バッテリーの容量は90kWhと大きく、EQE 350+の航続距離は555kmから634kmがうたわれている。得意とする高速道路でのクルージングなら、確かに600km以上は走行可能なようだ。日常的に暮らしやすい、BEVサルーンであることは間違いない。

初めてメルセデス・ベンツEQEを英国で試乗した筆者だが、EクラスやBMW i4などより、従来のクルマっぽく感じられなかった点にも触れておきたい。既存の概念を超えた、新しいラグジュアリーな移動手段と表現したいところだ。

メルセデス・ベンツEQE 350+ AMGライン(英国仕様)のスペック

英国価格:7万3450ポンド(約1211万円)
全長:4946mm
全幅:1961mm
全高:1512mm
最高速度:210km/h
0-100km/h加速:6.4秒
航続距離:555-634km
電費:5.3-6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2280kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:90.0kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:292ps
最大トルク: 57.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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