【詳細データテスト】シトロエンC5 X C以上D未満 快適志向のソフトな足回り 静粛性はあと一歩

公開 : 2022.10.08 20:25

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

C5 Xのポジショニングを考えると、快適性は秀でていてしかるべきポイントだ。そして、ある程度までそれは達成できている。身を沈めるふんわりしたシートは、誰もが良好なドライビングポジションを取れるアジャスト性を備えている。

エンジンはほとんど音を立てずに始動し、少なくともテスト車のようなパッシブダンパーを装着するガソリン車はプライマリーライドが非常にソフト。波の長いバンプをフラットにいなす感じはエアスプリングに近い感覚で、それでいて嫌なふわつきは出ない。

スポーティさより快適さを重視したC5 Xだが、セカンダリーライドはパーフェクトというには物足りない。とはいうものの、たしかにかつてのハイドロの後継者だと思わせるものはあった。
スポーティさより快適さを重視したC5 Xだが、セカンダリーライドはパーフェクトというには物足りない。とはいうものの、たしかにかつてのハイドロの後継者だと思わせるものはあった。    LUC LACEY

残念なのは、その仕事が完遂されていないこと。タイヤが路面の穴開きやジョイントを踏み越えると、ひどく粗いショックを遮断するには十分なサイドウォールが存在することはわかるが、ダンピングはホイールの動きを完全にコントロールできるほどではない。結果として、決して期待通りの静謐な乗り心地を得られずに終わっている。

この価格帯であれば、シートへの文句はないと言っていい。座面の長さ調整があればもっとよかったが、クッションは比較的長めだ。それでも、これはシトロエンの形状記憶フォームを備えるアドバンストコンフォートシート全般に言えることだが、長距離運転での疲労防止という点では、メルセデスやBMWにもっといいシートが見つけられる。

改善の余地がある分野を挙げるとするなら、遮音性だ。ただし、決してこのクルマの面目を損ねるほど悪いわけではなく、計測値はライバルたちに遜色ない。ロードノイズの反響が、ちょっと大きいのではないかという程度だ。

不満はないわけではないが、どれもたいして深刻なものではない。シトロエンが快適性重視を謳い、そのぶんハンドリングを妥協しているからこそ気になるだけだ。そうであるなら、セカンダリーライドはもっとよくていいはずだ。それでも、このクラスのクルマにエキサイティングさより心地よさを求めているなら、C5 Xは絶妙な選択肢だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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