【詳細データテスト】シトロエンC5 X C以上D未満 快適志向のソフトな足回り 静粛性はあと一歩

公開 : 2022.10.08 20:25  更新 : 2022.10.10 00:57

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

実用的なファミリーカーとしての座を、ほぼSUVに奪われて以来、ワゴンは以前よりスタイル重視でないと生き残れなくなった。プジョーは508でその戦略を取ったわけだが、シトロエンはそれにC5 Xで続いたのである。

われわれはC5 Xをワゴンだと思ったのだが、シトロエンはそう分類されることを望んでいない。「SUVのモダンさとステータスに、セダンのエレガンスとアピール、ワゴンのバーサタイルさと実用性をあわせ持つもの」なのだという。

ボンネットは長く、3気筒はもちろん、4気筒でもかなり余裕を持って搭載できる。遮音がしっかり施されているようで、フルスロットルで高回転まで引っ張らないと、エンジン音はほとんど聞こえない。
ボンネットは長く、3気筒はもちろん、4気筒でもかなり余裕を持って搭載できる。遮音がしっかり施されているようで、フルスロットルで高回転まで引っ張らないと、エンジン音はほとんど聞こえない。    LUC LACEY

そんな華々しい宣伝文句はさておき、C5 Xはやはりワゴンに違いない。ただし、リアウインドウはアウディ100アバントのように寝かせ気味だ。さらに、地上高を引き上げ、プラスティックのクラッディングを装着する手法は、ボルボがワゴンモデルに設定するクロスカントリーと同様である。

C5 Xはさらに、リアバンパーも無塗装部分が多い。一般的にはファッショナブルでないと思われる処理だが、重い荷物を積む際などにペイントを傷つける心配がないという点では実用的で、安心感がある。

機械面は、PSA時代からおなじみのコンポーネンツを使用している。プラットフォームはEMP2 V3で、ステランティスの現行モデルではプジョー308DS 4ヴォグゾール・アストラといった、比較的大きいモデルに用いられるものだ。

結果として、パワートレインも既存品となった。ただし、シトロエンは使えるエンジンをフルに設定することはなく、比較的シンプルなラインナップとした。驚くべきは、このサイズのクルマに3気筒が用意されること、そしてディーゼルは選択できないことだ。

そうはいっても、1.2L直3は一番の売れ筋になるだろう。ただし、そのエンジンは最近、プジョー308でテスト済みだ。そこで今回のテスト車には、180psの4気筒ガソリンを選択した。トランスミッションは、いずれのエンジンもアイシン製の頑丈な8速ATのみとなっている。

同じプラットフォームを用いる兄弟車たちと差別化されているのはサスペンションだ。シトロエンのシンボル的なハイドロは姿を消して久しく、さすがに復活することはなかったが、独自のプログレッシブ・ハイドロリック・クッション(PHC)はハイドロの乗り心地を目指したデバイスだ。

PHCは油圧バンプストッパーとでもいうべきもので、これがあることで、ダンパーとスプリングを通常よりソフトにすることが可能となった。プラグインハイブリッド車には、カメラで路面データを取得するアダプティブダンパーが装備される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事

        ×