ビッグ・シトロエン復活 C5 Xの乗り心地は? ID 19 XM 新旧ハイドロを比較 前編

公開 : 2023.03.04 09:45

シトロエンといえばハイドロ・サスが生む魔法の乗り心地。最新C5 Xの仕上がりを、DSとXMとの比較で確認しました。

快適性を最優先にするシトロエン

一部の自動車メーカーには、語り継がれるような記憶がある。シトロエンは、間違いなくその1社へ含まれる。他社と同様に、独自の記憶を強みとして捉え、何度も新しいモデルへ落とし込まれてききた。均質化が進む現在では、その重要性は高まっている。

遡ること1900年代半ば、第二次大戦後のフランスの道は、戦闘の舞台になった影響で荒廃していた。1934年に前輪駆動でモノコック構造のトラクシオン・アバンを発明したシトロエンへ、次のイノベーションをもたらすことになった。

ダークグリーンのシトロエンID 19と、ホワイトのシトロエンXM、ブラックのシトロエンC5 X ピュアテック130 シャインプラス
ダークグリーンのシトロエンID 19と、ホワイトのシトロエンXM、ブラックのシトロエンC5 X ピュアテック130 シャインプラス

同社の技術者だったポール・マジェス氏は、路面の穴をコイルスプリング以上に滑らかに処理できる方法を、高級サルーンのために研究していた。そこで導かれたのが、シトロエンの代名詞になった、ハイドロニューマチック・サスペンションだ。

その可能性を信じたマジェスは、1955年にリリースされた優雅なサルーン、DSへ搭載した。以降、多くのシトロエンにも展開された。これをきっかけに、ソフトな乗り心地で快適性を最優先にする自動車メーカーだと、見なされるようになった。

油圧と空気圧を用いたサスペンション構造は、60年以上も改良が続けられ、量産車へ採用されてきた。乗り心地の良さから、一時はロールス・ロイスメルセデス・ベンツがライセンス契約を結ぶほど。2015年のシトロエンC5まで、伝統は受け継がれた。

現代版のハイドロニューマチック、PHC

現在のシトロエンは、ハイドロニューマチックにかわる新技術を開発し、乗り心地の良さを誇示しようとしている。フラッグシップのクロスオーバー、C5 Xに搭載することで。

リフトバック・ボディのC5 Xのデザインは、従来のシトロエンとイメージがまったく異なる。だが、フランスのブランドとして、個性的な優雅さを湛えていると思う。車高が持ち上げられているが、スタイリッシュなステーションワゴンに近い。とても新鮮だ。

ブラックのシトロエンC5 X ピュアテック130 シャインプラスと、ホワイトのシトロエンXM、ダークグリーンのシトロエンID 19
ブラックのシトロエンC5 X ピュアテック130 シャインプラスと、ホワイトのシトロエンXM、ダークグリーンのシトロエンID 19

全長が4805mmもあるビッグ・シトロエンで、先進的なサスペンションを搭載している。それでいて、最高出力は控えめ。1970年のDSや、1991年のXMと比較するのにピッタリではないだろうか。

C5 Xが搭載するプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)と呼ばれる技術は、2018年のC4 カクタスから採用が始まっている。現代版のハイドロニューマチックだと、同社は主張している。

ハイドロという言葉を用いているが、実際は収縮用と伸張用の小さなサブ・ダンパーを内蔵した、従来のダンパーの延長上にある。サスペンションへ強い負荷が掛かると減衰力も変化し、油圧バンプストップのように機能し、強い衝撃を吸収してくれる。

実際の油圧バンプストップを採用するモデルも増えているが、シトロエンは特別なダンパーで、ソフトなコイルスプリングの採用を可能とした。サスペンションを柔軟に動かし、ストロークを使い切ることで滑らかな乗り心地を生んでいる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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