クルマと税金 政府、エコカー減税や自動車税見直しへ EV普及で「課税」どうあるべき?

公開 : 2022.10.29 11:45  更新 : 2022.10.31 23:19

エコカー減税や自動車税見直し?

このように、すでに自動車関連の課税を財源とする支出が歳入を超えているのだが、今後は電動車がEVへ大きくシフトすることが予想されるため、これまでのような「燃料課税」の方法はでは税収確保がさらに難しくなることが予想される。

それだけではなく、「車体課税そのものを変える必要があるのではないか?」という国側の考えに対して、参加した委員と特別委員からは概ね、そうした方向を支持する声が多かった印象がある。

排気量1000ccはトヨタ・パッソのクラスだ。
排気量1000ccはトヨタパッソのクラスだ。

そのやり取りに対して、SNSなどではユーザーが疑問を投げかけている。

政府税調でのやり取りを聞いていると、環境対策としてEV普及を推進することは重要だが、支出として道路の維持・補修を考慮するうえで、(一般的に)重量が重いEVを優遇させるだけではなく、全体としてバランスを取るようにするべき、という流れだ。

つまり、国税である自動車重量税における「エコカー減税」の見直しが必要であること。

また、都道府県税である自動車税についても、現在は「グリーン化特例」で(多くの地域で)75%減税としているが、そもそもEVはエンジンがないことで、自動車税の区分として「総排気量1000cc以下」に組み込まれていることについても、見直す可能性があるということだろう。

「モノ中心」から「社会中心」へ

最後に私見を述べたい。

全体像としては、「モノ中心」から「社会中心」への、根本的な税体系の転換が必然だと思う。

日産サクラと三菱eKクロスEV
日産サクラ三菱eKクロスEV    宮澤佳久

これまでの車体課税は自動車税、自動車重量税、環境性能割(旧・自動車取得税)という「モノ中心」だった。燃料課税も「モノの数」によって左右されてきた。

一方、これからは、「移動の目的(通勤・通学・通院・レジャー)」、「移動の種類(時間・場所『都市部・地方部・中山間地域』・乗用または商用/公共交通機関の枠をこえた所有か共有)、そして「使用するエネルギーの種類(化石燃料由来・再可能エネルギー)」など、「社会中心」のさまざまなパラメーターを複合的に解釈した税体系に変わるべきだと思う。

その中には、例えば交通に関する料金を税体系化した「交通税」という考え方も出てくるのではないだろうか。

日本自動車工業会や日本自動車連盟からは国に対して、海外と比べて日本の車体課税が高いことに対する是正や、複雑化している自動車関連課税の簡素化に対する要望が出ている。

だが、そうした要望は、まだ「モノ中心」の範囲にとどまっている印象がある。

100年に1度の自動車産業大変革においては、「モビリティの税」という観点で、デジタル化(DX)をフル活用した、根本的な税体系の見直しが必要だと感じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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