史上最も多能なワゴン アルピナB3 ツーリングへ試乗 直6ツインターボは495psへ

公開 : 2022.12.18 08:25

直6ターボは495psと74.2kg-mへ上昇

ホイールの奥では、オプションのブレーキキットが存在感を示す。恐らく、ハイエンドな7シリーズとドリルド・ディスクを共有するのではないだろうか。

ステアリングホイールの裏側には、CNC加工で美しく削り出されたシフトパドルが鈍く光る。M3の樹脂製アイテムより触れた感触は数段イイ。290ポンド(約5万円)するが、悪くないお金の使い方だと思う。

アルピナB3 ツーリング(英国仕様)
アルピナB3 ツーリング(英国仕様)

さて、実際に一般道を走らせてみよう。B3 ツーリングが、この上ないほど幅広く優れた能力を備えることは変わらない。

乗り心地や旋回性には、実際の道路環境で理想的といえる絶妙な精度が与えられている。コーナリングスピードは息を呑むほど速く、能力の上限へ迫るには相応の覚悟も必要になる。

フェイスリフト前でも、B3 ツーリングがパワー不足ということはなかった。それでも最新版では、462psから495psへ最高出力が向上している。

最大トルクも、71.2kg-mから74.2kg-mへ太くなった。3.0Lのツインターボ・ユニットとしては圧巻のたくましさだ。ベースのユニットはBMW M社が組み立て、アルピナが仕上げを施している。

最大トルクの発生回転域は2500rpmから。6速に入っていても、3速や4速と変わらないような加速を披露する。あるいは、2速とも。1880kgある車重をものともしない。

天候を問わず、郊外の道を圧倒的なスピードで駆け巡れる。過度にドライバーを支配しない、トラクションとスタビリティ・コントロールによって、安全性が担保されながら。

史上最も多能なモデルの1台

ドライバーが穏やかな気持でも、運転する気に溢れていても、エンジンは不足ないパワーを即座に発生できる状態にある。シャシーは終始落ち着いていている。B3 ツーリングに対して、揺るぎない信頼感を抱ける。

ボディロールやピッチングに対する制御も秀抜。圧倒的な動的能力を展開しつつ、しなやかな乗り心地も維持するという、極めて難易度の高い技を実現している。目立ったトレードオフも存在しない。

アルピナB3 ツーリング(英国仕様)
アルピナB3 ツーリング(英国仕様)

英国価格は7万9000ポンド(約1311万円)からに設定されたが、納得の仕上がりといっていい。オプションが盛り込まれた試乗車の場合は、9万9165ポンド(約1646万円)に達していたが。

M3 ツーリングは、それ以上の価格になることが予想される。逆にいえば、アルピナの価格に対する正当性が高まるともいえるだろう。

B3は、M3と同等のクルマとの一体感は得られない。ブレーキペダルの踏みごたえはソフトだし、ステアリングホイールの感触には薄いフィルターが掛かったような印象もある。アクセルペダルでのライン調整も、M3ほど自在ではないことは事実だ。

だとしても、アルピナB3 ツーリングは史上最も多能なモデルの1台に数えられる。雨でも雪でも、ホットなドライバーの気持ちへ完璧に応えてくれる。こんなステーションワゴンには、簡単にお目にかかることはできない。

アルピナB3 ツーリング(英国仕様)のスペック

英国価格:9万9165ポンド(約1646万円/試乗車)
全長:4723mm
全幅:1827mm
全高:1438mm
最高速度:302km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:229g/km
車両重量:1880kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:495ps/5000-7000rpm
最大トルク:74.2kg-m/2500-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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