メルセデスAMG C63 S Eパフォーマンス試乗 直4+PHEVで仕上げた新時代の「63」

公開 : 2022.12.14 08:01

意外? 洗練度が大きく進化

スペイン南部のマラガを起点とした今回の試乗会では、まず、C63 S Eパフォーマンスを一般道で走らせた。

この地域の路面は決してスムーズとは言いがたいが、それでもC63 S Eパフォーマンスは路面の細かな振動をたくみに吸収してゴツゴツした印象を与えない。

メルセデスAMG C63 S Eパフォーマンス
メルセデスAMG C63 S Eパフォーマンス    メルセデスAMG

それでいながら、コンフォート・モードでも十分なフラット感が得られるのが印象的だった。

この種のスポーツモデルでは、ハーシュネスの改善を重視するあまり、ボディをフラットに保つのに必要な減衰力を確保できていないモデルが少なくない。

この場合、低速域では快適でも、速度を上げるにつれてピッチングが起き始めて、結局スポーツ・モードなどに切り替えることになるのだが、C63 S Eパフォーマンスではそれがなく、コンフォート・モードのまま高速道路を走るのにまったく不満を覚えなかった。

さらにいえば、スポーツ・モードでもハーシュネスが極端に悪化しない点も印象的だったが、それだけに、乗り心地だけに関していえばコンフォート・モードとスポーツ・モードの差が小さかったともいえる。

さらにいえばロードノイズが小さいことも「63系AMG」としては実に意外。

快適な乗り心地を含め、メルセデスAMGの洗練度が大きく進化していることが深く印象に残った。

サーキットで実感する「新時代」

アスカリ・サーキットでC63 S Eパフォーマンスが示した走りも、これまでのAMGの概念を覆すものだった。

フロントに265/35R20、リアに275/35R20のミシュラン・パイロットスポーツ4Sを装着した足まわりは、スキール音やステアリングからのインフォメーションなどによって、グリップ限界のはるか手前から警告を発し始める。

メルセデスAMG C63 S Eパフォーマンス
メルセデスAMG C63 S Eパフォーマンス    メルセデスAMG

おかげで、ドライバーが「不測の事態」に備える猶予がたっぷりと与えられる点が、まずは嬉しい。

さらにいえば、実際にテールが流れ始めてからの修正も容易。

一旦リアがスライドし始めると、タイミングよくカウンターステアをあててもすぐにこれがとまることなく、スリップアングルが大きくなってしまいがちだった従来のメルセデスAMGとは異なり、ステアリング修正に対する反応が素早いので、より精度の高いドライビングが楽しめるのだ。

これをサポートするスタビリティ・コントロール・システムの仕上がりも秀逸で、システム・オンの状態でもわずかなスリップアングルを許してくれるばかりか、システムが作動しても「ガガガガガッ」という無粋な振動を感じさせることなく、実に洗練されている。

そしてスタビリティ・コントロールをスポーツに切り替えれば、スリップアングルを許容する範囲がさらに拡大。ダイナミックなドリフト走行が楽しめるようになるのだ。

メルセデスAMG自身が「55年の歴史で初となる真のゲームチェンジャー」と説明するC63 S Eパフォーマンスは、街乗りでもサーキット走行でも洗練された走りが堪能できる「新時代のAMG」といって間違いないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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