そのデザインに『らしさ』はありますか? フェラーリ・ルーチェ論争に思うこと【森口将之の『もびり亭』にようこそ 第21回】
公開 : 2026.06.10 12:05
モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティに関するあらゆる話題を語るこのブログ。第21回は、最近話題の『フェラーリ・ルーチェ』をきっかけに、デザインをテーマとします。キーワードは『土地』と『目的』です。
フェラーリ・ルーチェのデザインが話題に
フェラーリ初のEV、ルーチェのエクステリアデザインが話題になっていますね。SNSの書き込みを見ると、ネガな意見のほうが多いような印象を受けます。
僕はまだ実車を見たことありませんが、日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨のしくみである、グッドデザイン賞の審査委員を10回以上務めていて、レイルウェイ・デザイナーズ・イブニング(RDE)という、鉄道デザインの未来を考える場『RDEフォーラム』を提供する活動グループの実行委員でもあります。

デザイナーではないけれど、デザインの評価をしたり、議論をしたりという経験はそれなりに積んでいるので、ルーチェのエクステリアデザインが話題になっている様子を見て、自分なりにちょっと考えてみました。
この連載でデザインについて語るのは2回目です。前回は2024年12月に取り上げていますが、そのときに僕は、乗り物のデザインは『機能』と『官能』の両輪で成り立っているということを書きました。
今回はちょっと見方を変えて、『土地』と『目的』という2つのキーワードを出すことにします。
キーワードは『土地』と『目的』
土地というのは、生まれた国や、走る地域のこと。目的とはもちろん、どんな人が乗り、どのように使われるかということになります。その乗り物が個性、つまり『らしさ』を表現するうえで重要な要素だと思っています。
トヨタ・カローラのようなクルマは、世界中で多くの人に向けて販売されるので、これらの『らしさ』は希薄ですが、販売台数や展開地域がそこまでではないと、お国柄や土地柄、目的や性格が形にはっきり出てくるものです。

クルマやバイクで言えば、やはりイタリアが目立っていると感じています。そもそもイタリアはデザイン大国。この国生まれであることは見てすぐにわかるし、どんな人に向けて送り出されたかも伝わってくるのはさすがです。
ここ1年ぐらいでいちばん記憶に残っているのは、ランチア・イプシロンです。プラットフォームはプジョー208と共通で、ブランド再生という重責もあったのに、まぎれもないランチア。
イタリア車らしい美意識と創造性にあふれているだけでなく、同じクラスのフィアットやアルファ・ロメオとまったく違う世界観が描かれていて、自分たちのブランドがどういう人に向けたものか、しっかり描き切っているところがさすがです。
スカンジナビアンデザインのモーターサイクル
イタリア以外でデザインが評価される土地としては、北欧もあります。
クルマで言えば、最近のボルボはどれもスタイリッシュで、さすがスカンジナビアンデザインだと感心していますが、ここではハスクバーナのモーターサイクルを取り上げます。

ハスクバーナは芝刈り機やチェーンソーのメーカーとしても知られていますが、モーターサイクルも作っていて、現在はオーストリアのKTMと同じグループにあります。長らくオフロード専門でしたが、近年はロードスポーツの分野に進出しています。
それがこのスヴァルトピレンで、車名は黒い矢という意味のスウェーデン語。兄弟車にヴィットピレン(白い矢)もあります。排気量は250cc(スヴァルトピレンのみ)・400・800ccがあるので、普通自動二輪免許で乗れる車種もあります。
フレームやエンジンはKTMと共通なのに、先鋭的なKTMとは対照的に、モダンながらクールなスタイリング。2代目となる現行型は自然なライディングポジション、鋭すぎない走りも北欧ならでは。でも車名が示しているように、矢のように疾走するダイナミズムもしっかり感じられます。





























