無重力を飛ばすような敏捷性 アリエル・アトム 4RR x BMW M2 CS(2) 空気の壁を打ち破った究極マシン

公開 : 2026.06.12 18:10

ホンダのK20Cユニットを532psへ強化し、エアロキットで武装したアリエル・アトム 4RR。無重力の中を飛ばすような敏捷性を、UK編集部がサーキットで体感。BMW M2 CSを比較相手に全開放です。

ラインが1m違えば遠心力で外へ

手始めに、BMW M2 CSに乗りピットレーンを出発。コースの広さに安心したのも束の間、速度が上昇するほど狭く感じられてくる。レイアウトは複雑ではないが、ドライバーやクルマへの要求は厳しい。サスペンションを使い切る、起伏やカントが続く。

高い速度域で滑らかに走るには、正確なライン取りが求められる。目立たないが、コーナーには確かなバンクもある。例えばアラルドやグッドウッド・コーナーでは、旋回位置が1mも違えば、遠心力で外へ飛ばされそうになる。

ダーク・ブルーのBMW M2 CSと、イエローのアリエル・アトム 4RR
ダーク・ブルーのBMW M2 CSと、イエローのアリエル・アトム 4RR    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ラインを掴み損ねたら、アクセルペダルを僅かに緩めて体勢を整え、次の周で改めて狙うのが賢明だろう。もっとも、M2 CSの懐は深い。ミシュラン・カップタイヤが温まり、本来のグリップ力が発揮されると、狙い通りのライン取りがしやすくなる。

運転体験はクルマというよりバイクに近い?

トラクション・コントロールは10段階に調整でき、必要に応じて弱められる。チャーチやブルックランズなど、高速コーナーでの姿勢制御は大きな悩み処。スポーツ・モードからダンパーをソフトに少し戻し、路面の不整を吸収してもらう方が良さそうだ。

車重は1700kgあり、200km/h以上の速度で旋回すれば、上下動は穏やかなものではない。10周ほど攻めて、クラブ・コーナー手前での最高速度は、236.8km/hに届いた。ベストタイムは1分29.5秒。もう少し走り込めば、2秒ほど削れるかも。

BMW M2 CS(英国仕様)
BMW M2 CS(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

という期待を抱きつつ、アリエル・アトム 4RRへ。車重はM2 CSの半分以下で、運転体験は、クルマというよりバイクに近いかもしれない。だがシートの調整域は広く、ステアリングホイールやペダルの位置は理想的。身体を収めると、安心感が湧いてくる。

コースインして回転数を引っ張ると、ホンダのK20Cユニットは4気筒らしい咆哮を放つ。ターボチャージャーの悲鳴は、予想より小さい。6速シーケンシャルMTは、空気圧でギアが切り替わり、積極的に運転している限りクラッチペダルは踏む必要がない。

無重力の中を飛ばしているような敏捷性

エンジン・マッピングは、最弱の「1」でも充分強力。瞬間的にパワーが召喚され、最初の数周は無重力の中を飛ばしているよう。エネルギーが漲り、ダイレクトに反応するが、慣性は殆ど感じ取れない。

他方、ノーマルのアトムは繊細さや軽快感を伴うのに対し、4RRはステアリングが重く別物。それでいて、ボディはスムーズに流れる。M2 CSで手を焼いた高速コーナーのうねりも、まったく気にさせない。

アリエル・アトム 4RR(英国仕様)
アリエル・アトム 4RR(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

しばしの休憩を挟み、マッピングを最強の「3」にして532psを開放する。圧巻なほどに速く、パワーデリバリーは線形的。低域からトルクが太く、8000rpmまで回す必要はない。アクセルペダルの角度を数mm変えるだけで、勢いが変化する。

240km/h超でも、加速は続く。ステアリングは重いまま、シャシーに不安定さが滲み出すことはない。アクセルペダルを踏み続け、シフトライトを視界に入れシフトアップ。スピードメーターをチラ見する。ブレーキングポイントは、寸分も逃せない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アリエル・アトム 4RR x BMW M2 CSの前後関係

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