航続距離を474kmへ伸長 アウディSQ8 eトロン・スポーツバックへ試乗 最高出力503ps

公開 : 2023.01.01 08:25

トリプルモーターの高性能EV SUVがマイナーチェンジで改名。競合モデルの方が総合力では優勢だと、英国編集部は評価します。

eトロン S改めSQ8 eトロン

バッテリーEV(BEV)の拡大を進めるアウディは、フェイスリフトに合わせて一部のモデル名を見直した。これまでeトロンを名乗っていた大型SUVはQ8 eトロンになり、eトロン SはSQ8 eトロンに改められている。

SQ8 eトロンの特徴といえるのが、フロントに1基、リアに2基、合計3基の駆動用モーターを搭載すること。それにより秀でた動力性能と、高精度なトルクベクタリング機能を実現させている。

アウディSQ8 eトロン・スポーツバック・ブラックエディション(欧州仕様)
アウディSQ8 eトロン・スポーツバック・ブラックエディション(欧州仕様)

リアの駆動用モーターを左右個別に制御することで、片側のタイヤに最大で22.3kg-m大きいトルクを掛け、鋭いコーナリングを可能としている。トリプルモーター合計での最高出力は503ps、最大トルクは99.0kg-mがうたわれる。

フェイスリフトで得たアップデート内容は、基本的には穏やかなQ8 eトロンと同等。駆動用バッテリーはエネルギー密度を高め、容量は89kWhから106kWhへ増えた。ワゴンボディの通常のSQ8 eトロンでは、航続距離が355kmから457kmへ伸びている。

今回試乗したクーペボディのSQ8 eトロン・スポーツバックでは、ドライブトレインは同じながら空力特性が貢献し、474kmと僅かに長い。一方でツインモーターのQ8 55 eトロンでは、531kmが主張されている。

凍結路で発揮されるトルクベクタリング

エネルギー効率は、ワゴンボディのSQ8 eトロンで3.5km/kWh。スポーツバックで3.7km/kWhと、ライバルモデルと比較すると少々劣る。

BMW iX xドライブ50の場合、駆動用バッテリーの容量は同等で航続距離は548kmある。動力性能では少し劣るが、ジェネシス・エレクトリファイドGV70はさらに効率が良く、77.4kWhの容量ながら455kmがうたわれている。

アウディSQ8 eトロン・スポーツバック・ブラックエディション(欧州仕様)
アウディSQ8 eトロン・スポーツバック・ブラックエディション(欧州仕様)

いわずもがな、同じ距離を走るとすれば、SQ8 eトロンの方がより充電時間が長く電気料金も掛かる。内燃エンジンでの燃費の差と同じだ。

それでいて、動的能力はアウディのSモデルとして期待するほど、並外れた水準にまでは届いていない。0-100km/h加速は4.5秒でこなし、気持ちが悪くなるほど鋭いダッシュ力を披露する高性能BEVの仲間入りは果たしていても、その楽しさは長くは続かない。

トリプルモーターを活かした、トルクベクタリング機能は素晴らしい。半年ほど前に開かれたメディア向けの試乗会では、凍結した湖上で能力を体験させてもらったが、深く感心させられた。ただし、一般的な路面条件ではQ8 eトロンとの違いは小さい。

確かに、SQ8 eトロンの走りは鋭く機敏ではある。かといって、車重が2650kgある大型SUVを、存分に振り回したいと考えるドライバーの数は多くないだろう。

記事に関わった人々

  • イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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