上品な専用ボディの2ドアクーペ オペル・マンタ A フォード・カプリに対抗 後編

公開 : 2023.01.01 07:06

1970年代、手頃な価格の2ドアクーペが市民権を獲得。その立役者の1台となったマンタを、英国編集部が振り返ります。

提供されたのは堅実な4気筒エンジンのみ

オペル・マンタ Aのトレッドはフォード・カプリとほぼ同値だったが、3.0L V6エンジンのようにパワフルな選択肢は用意されなかった。5年間、約50万台の生産で提供されたのは、堅実的な1.2Lから2.0Lの4気筒エンジンのみだ。

ちなみに、ベルギーのトランスヨーロッパ・エンジニアリング社が、TE2800という6気筒エンジンを積んだマンタを製造している。加速力はポルシェ911に迫ったというが、オペルの認可は得ていなかった。

オペル・マンタ A 1900(1970〜1975年/欧州仕様)
オペル・マンタ A 1900(1970〜1975年/欧州仕様)

英国のブロードスピード社も独自にマンタ・ターボを製作。200km/h以上の最高速度を叶え、28台が販売されている。ブラックのボディが目印だった。

1970年のオペルのショールームでは、ベースグレードのほかにLとDLというトリムグレードを選択できた。それでも不満なドライバーは、ダッシュボードの追加メーターと引き締まったサスペンションが得られる、SRラリー・パッケージが選べた。

当初のエンジンは、キャブレター1基にシングル・オーバーヘッドカムという組み合わせ。1.6Lで69ps、1.9Lでは91psを発揮した。4速MTの1.9Lなら最高速度は169km/h、0-97km/h加速を12.5秒でこなした。3速ATも選択できた。

1974年に追加されたGT/Eグレードでは、北米仕様で標準装備だったボッシュLジェトロニック燃料インジェクションを獲得。1.9Lの最高出力が110psへ大幅に向上している。

マッスルカーとは違う上品なスタイリング

英国にやってきたマンタでは、1.6Lのほかに60psの1.2Lエンジンも選べた。もちろん、GT/Eも導入されている。マンタ・プラスやホリデー、ブラックマジック、サンバザーなど、多彩な特別仕様も提供された。

今回ご紹介するバーガンディ・カラーのマンタは、その1つとなるベルリネッタ。スポーツホイールに熱線入りリアガラス、ビニールルーフなどを装備した上級仕様だ。

オペル・マンタ A 1900(1970〜1975年/欧州仕様)
オペル・マンタ A 1900(1970〜1975年/欧州仕様)

ホワイトのボディにレッドのストライプがあしらわれたマンタも、スウィンジャーと呼ばれる特別仕様。どちらもオペルのヒストリック部門が管理するクルマで、素晴らしい状態にある。

2023年に見るマンタはボディの幅が狭く、13インチと小さなホイールが内側に引っ込みすぎているように思えるが、スタイリングは魅力的。フォード・カプリほどディティールの処理に気が配られていないものの、マッスルカーとは違う上品さがある。

丸い4灯のテールライトとリアガラスのラインが、マンタらしさを生み出している。フレームレス・ドアの大きなサイドウインドウと、細いBピラーがルーフまわりに軽快感を与えている。

どちらもエンジンは1.9L。フロントヒンジのボンネットを持ち上げると、オペルで多用されたオーバースクエアのシングルカム・ユニットが姿を表す。1960年代初頭にデトロイトで設計されたものだ。

ヘッドにカムが内蔵され、堅牢で信頼性が高く、多様な展開が可能だった。しかし、スチール・ブロックで軽くはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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