能力を引き出す最高のレシピ ACシュニッツァー ACS2 40iへ試乗 逸品のスポーツサス

公開 : 2023.02.22 08:25

姿勢変化が制御され、正確性が向上

フロントには、樹脂製のチンスポイラーがぶら下がる。トランクリッドに載せるスポイラーも開発中だが、試乗車はノーマルのままだった。インテリアの専用のトリムも設定されている。

1番目につくのは、20インチの大きくアグレッシブなホイールだろう。フロント側は、タイヤサイズもワイドになっている。リアの幅は、通常と変わらない。

ACシュニッツァー ACS2 40i(英国仕様)
ACシュニッツァー ACS2 40i(英国仕様)

鋳造より軽く鍛造より安い、フローフォーミング製法で作られており、重量は標準のアイテムより4本合計で10kg削減している。バネ下重量が操縦性や快適性に大きな影響を与えることは、ご存知のとおりだ。

ホイールとタイヤのセットで、英国価格は4750ポンド(約77万円)。スポーツサスペンションは、2150ポンド(約35万円)。つまりこの2点、7000ポンド(約112万円)ほどあれば、M240iの走りを見違えさせることができる。

その成果は、発進させてすぐに理解できた。ステアリングホイールを握った数分後には、1日中運転したいと感じていた。

明らかに身のこなしが軽い一方で、標準モデルと同じくらい乗りやすい。交差点をゆっくり加速するような場面でも、姿勢変化が制御され、正確性が高められていることが伝わってくる。慣性が減り、シャシー全体のフィードバックが増えている。

独自のステアリングホイールも、選ぶ価値がある。肉厚ながら剛性感が高く、路面からの感触をより鮮明にしている。入力に対する反応も鋭さを増すが、過敏なほどではない。

スポーツカーの能力を引き出す最高のレシピ

四輪駆動システムは、BMWの技術者が煮詰めている。ACS2 40iでは、抑制されたボディロールとダイレクトさを増したステアリングで、その能力を引き出しやすい。

コーナーへ侵入すると、よりクリアに旋回が始まる。出口に向けて、リアアクスルへパワーを確実に展開していける。

ACシュニッツァー ACS2 40i(英国仕様)
ACシュニッツァー ACS2 40i(英国仕様)

速度域が高まると、路面変化を感じ取りやすくなっていく。それでいて、強い衝撃で頭が揺さぶられるようなこともない。硬軟の絶妙なバランスだ。

サスペンション・スプリングは、強烈な負荷がかかると急激に収縮する傾向があるようだが、不満といえばその程度。これ以上の落ち着きを得るなら、調整式ダンパー付きの車高調システムを組む必要があるだろう。

ACS2 40i全体の仕上がりは、非の打ち所がないほどに高水準。舗装の傷んだ路面を処理しながら、流暢に駆け巡ることができる。車高は20mmしか違わないが、実際は120mmくらい路面へ近づいた印象だった。

確かに、ACS2 40iはハードエッジではある。快適性重視のグランドツアラーとしてBMWのコンパクトなクーペを楽しみたいなら、M240iへ手を加える必要はないだろう。

スポーツカーとしての能力を引き出したいなら、ACシュニッツァーのチューニングメニューは最高のレシピといっていい。深い充足感と、乗りやすさが両立されている。本来の魅力が解き放たれた、目からうろこの体験が待っている。

ACシュニッツァー ACS2 40i(英国仕様)のスペック

英国価格:1万9350ポンド(約311万円/フルコンバージョン・パッケージ/ベース車両は別)
全長:4537mm
全幅:1838mm
全高:1390mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.3秒
燃費:11.4-12.2km/L
CO2排出量:186-200g/km
車両重量:1680kg
パワートレイン:直列6気筒2998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:373ps/5500-6500rpm
最大トルク:50.9kg-m/1900-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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