中国ブランド小型EV 福島で生産へ 月額9800円「大熊Car」とは? 「日本生産」のねらい、孫社長に訊く

公開 : 2023.03.14 05:45

Z世代に響く? 五菱Air evと宝駿KiWi EVとは

アパテックがマーケティング調査をはじめ日本での販売準備に入った他の2台について紹介しておこう。

2台とは「Air ev」(インドネシアで生産)と「KiWi EV」(中国国内で生産)で、いずれも上汽通用五菱が製造・販売する小型EVである。

宝駿KiWi EVは近未来的かつ有機的なスタイルの小型EV。
宝駿KiWi EVは近未来的かつ有機的なスタイルの小型EV。

上汽通用五菱は2020年8月に発売され日本でも話題になった「45万円EV」こと宏光MINI EVを世に送り出したことで知られる自動車メーカーだ。

宏光MINI EVは発売直後から意外な高品質と無駄を省いた機能重視の仕様、リーズナブルな価格設定によって、年間40万台前後を販売する爆発的な人気となっており、中国国内では日産シルフィと1、2位を争う販売台数を誇る。

同社は小型ミニバンでも高い支持を得ており小型車の生産ノウハウに長けたメーカーなのである。

2022年6月に発表された「Air ev」は全長2974mmx全幅1505mmx全高1631mmと宏光MINI EVとほぼ同じボディサイズとなる。

生産はインドネシアでおこなわれており、2022年11月に同国で開催されたG20で公式車両として採用されたことでも大きな話題を集めた。

航続距離(CLTC方式)は宏光MINI EVが120km(容量9.3kWh)と170km(容量13.8kWh)なのに対し、Air evでは大きく上まわる200kmと300kmのモデルを設定。ホイールベースの違いによって2名乗り、4名乗りの設定がある。

いっぽう、BAOJUN KiWi EVは上汽通用五菱が展開するブランドの1つ「宝駿」(BAOJUN)下の超小型EVである。

2020年1月に発売された当初の「宝駿E300」から2021年8月のマイナーチェンジで「宝駿KiWi EV」へと改称している。

Air evよりもさらに近未来的かつ有機的なスタイルはZ世代からの人気を集めそうだ。

全長2894mmx全幅1655mmx全高1595mmのコンパクトなワイドボディは大人4人が乗車しても意外なほどゆったりしており、内外装も洗練されている印象だ。

福島から世界へ 高齢者にも「わかりやすい」

筆者はいま、「おおくま学園祭」が開催されている大熊町インキュベーションセンターでこの原稿を書いている。

3月12日、復興が進む大熊町でおこなわれた「おおくま学園祭」は、避難している住民の皆さんも各地から集まってにぎやかに開催されている。

3台の小型EVは福島の未来を明るくすると筆者。
3台の小型EVは福島の未来を明るくすると筆者。

「大熊Car」をはじめとした3台の小型EVへの注目も高い。

特に高齢の町民の皆さんから「中国の電気自動車がいいねえ」「ボタンがわかりやすく使いやすい」「小さく見えるが乗ってみたけど意外と広い」などの声があちこちから聞こえてくる。

町が完全に震災前に戻るにはまだ時間がかかるのだろうけれど、小さなEVに集まる人々の笑顔を見ているとこの町の将来が明るいものになると確信できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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