時代を超越した美貌 メルセデス・ベンツ W111型カブリオレ(2) 戦後が香るフラッグシップ

公開 : 2025.04.27 17:46

フィンテールがベースのW111型クーペとカブリオレ 280 SE 3.5は220 SEbの2倍のお値段 縦に重なったバンパーとヘッドライト 戦後の雰囲気を漂わせる内装 英編集部が2台で魅力を再確認

戦後間もない頃の雰囲気を漂わせる内装

今回は2台のW111型メルセデス・ベンツを並べてみたが、筆者はV型8気筒エンジンを積んだ280 SE 3.5カブリオレより、直列6気筒の220 SEbカブリオレの方へ共感したくなる。半値近い、最近の取引価格を抜きにしても。

前期固有の存在感の強いフロントグリルや、ウォルナットが用いられたダッシュボードにドアパネルなど、W111型として好きになる要素が多い。コラムシフト・レバーとアイボリーのステアリングホイールも、戦後間もない頃の素敵な雰囲気を漂わせる。

メルセデス・ベンツ280 SE 3.5カブリオレ(1969~1971年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ280 SE 3.5カブリオレ(1969~1971年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

V8エンジンの280 SE 3.5と異なり、220 SEbのサイドウインドウは手動のワインダー。ソフトトップは、どちらも手で開閉することになる。アメリカ市場向けの上級カブリオレでありながら、電動ではない。

2台とも、長く重いフレームレスドアは、滑らかに閉まる。ロングデッキのプロポーションがスポーティな、キャビンは居心地がいい。シートは肉厚で、クロームメッキは1960年代のドイツ車的といえる。荷室は広い。

ゆったりとした後席側にはソフトパッドが多く用いられ、安全性への配慮にも抜かりない。ソフトトップを閉めると、斜め後方の視界はほぼ得られないが。前方に広がるボンネットは、280 SE 3.5の方が大きなパワーを示すように肉付きがいい。

明らかに活発で運転しやすい280 SE 3.5

公道で流暢に走るのは、案の定280 SE 3.5カブリオレ。明らかに活発で、現代の交通の流れへ問題なくついていける。運転しやすく、追い越すこともできそうだ。

V8エンジンは、燃料ポンプの動作音を確かめながらキーを捻れば、即座にお目覚め。シフトレバーは軽く動かせ、1990年代のモデルのように、余裕のパワーで加速してみせる。180km/hくらいの速度で、アウトバーンを終日巡航することもできるだろう。

メルセデス・ベンツ280 SE 3.5カブリオレ(1969~1971年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ280 SE 3.5カブリオレ(1969~1971年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

反面、丁寧に運転すれば、燃費は7.1km/Lほど。普段使いできない数字ではない。

4速ATは、この280 SE 3.5で最もぎこちない部分。シフトダウンは、現代のモデルへ乗り慣れていると、不安になるほど唐突に行われる。キックダウンさせるには、アクセルペダルを想像以上に踏み込む必要もある。

ブレーキは力強い。ステアリングホイールは軽いものの、路面との設置感がある程度伝わる。殆どの状況で、優れた操縦性といっていい。低速のカーブでは、フロントノーズの動きにお釣りがあるものの、高速の緩いカーブでは、安定していて自信を抱ける。

過度に攻めると、スイングアクスルが支えるリアタイヤは乱れるだろう。優雅な見た目のとおり、大人しく流暢に走らせるのが正解。レザーの香りと豊かなトルクを味わいながら、粗野な振動が排除された、しなやかな乗り心地を謳歌するのが望ましい。

記事に関わった人々

  • マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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