どこへでも向える自信 ランドローバー・シリーズ1 着想はジープ 1948年のゲームチェンジャー(4) 

公開 : 2023.05.06 07:06

快適とはいいにくい運転環境

1997年に自身でレストアへ着手。作業終了後は本来の目的通り、様々な用途に役立てているという。「トレーラーを引っ張ることもありますし、不整地も走ります。2018年には、バルセロナまで自走もしました」

「乗り心地はどうですか?」。ジャガーXK120のオーナー、デイブ・ナーシー氏が尋ねる。「まったく問題ないですよ」。ティムが答える。

ランドローバー・シリーズ1 80インチ(1948〜1951年/欧州仕様)
ランドローバー・シリーズ1 80インチ(1948〜1951年/欧州仕様)

「妻はシートの背もたれにブランケットを挟んで、クッション代わりにしています。わたしは気にしません。快適です」。と、初期のランドローバー・オーナーに共通する、明るくタフな考えを言葉にする。

実際のところ、3番目に完成したランドローバー・シリーズ1の運転環境は、快適だとはいいにくい。とはいえ、我慢が必要なほどではない。

軽くアクセルペダルを踏みながら、プッシュボタンでスターターを回すと、4気筒エンジンが勢いよく目覚める。古い商用車に共通するが、ドライビングポジションは直立気味で、運転席からの視界は良好。ペダルやステアリングホイールの位置も丁度いい。

1.6Lエンジンは粘り強く回り、2速での発進もいとわない。通常、ティムはそうしているという。

ステアリングとシフトレバーに遊びが多いのは、製造品質が低いわけではなく、オフロード走行が前提だから。深いワダチやコブを越えても、シリーズ1は動じることなく進んでいく。

どこへでも向えそうな自信を与える

英国のクラシックカー・イベントでは、移動手段として頑張るランドローバー・ディフェンダーを目にすることも多い。このグッドウッド・サーキットでも、シリーズ1は走る場所を選ばない。むしろ、困難な悪路を探したい気分になってくる。

最大トルクは11.0kg-mと限られるものの、軽量なボディのおかげで、舗装された道では驚くほど活発に走る。ステアリングの反応は曖昧で、車線中央を維持するには多少の慣れも必要だが、運転する時間が長くなるほど信頼感も大きくなる。

ランドローバー・シリーズ1 80インチ(1948〜1951年/欧州仕様)
ランドローバー・シリーズ1 80インチ(1948〜1951年/欧州仕様)

不思議なことに、シリーズ1のランドローバーは、ドライバーへどこへでも向えそうな自信を与えてくれる。実際、そのために設計されている。戦後の新しい経済を根っこで支えた、最前線にあるクルマといえた。

英国のオフローダーの代名詞として、世界中で認識されるに至った、ディフェンダーの原形となるランドローバー・シリーズ1。オリジナルの姿勢はそのままに、快適性を高めた新型へ世代交代を果たしたことは、ご存知のとおりだ。

ランドローバー・シリーズ1 80インチ(1948〜1951年/欧州仕様)のスペック

英国価格:450ポンド(新車時)/5万ポンド(約805万円)以下(現在)
販売台数:約1万8700台
全長:3353mm
全幅:1549mm
全高:1867mm
最高速度:93km/h
0-97km/h加速:−
燃費:6.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1264kg
パワートレイン:直列4気筒1595cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:50ps/4000rpm
最大トルク:11.0kg-m/2000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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