ポルシェとの見事な競作 アウディRS2 320psの高速ワゴン 英国版中古車ガイド

公開 : 2023.05.01 08:25

ポルシェとの共同で開発された、M3に対するアウディの回答がRS2。高性能ワゴンの元祖を、英国編集部がご紹介します。

大径ターボで320psと44.1kg-mを獲得

優れたチームワークは、期待以上の成果を残すことがある。自動車業界を振り返れば、アウディRS2 アバントが約30年前にそれを証明していた。今でも、その魅力はまったく色褪せていない。

1990年代初頭、アウディはブランドイメージを向上させ、BMW M社を焦燥させる、高性能モデルを提供したいと考えていた。既にS2と呼ばれる、直列5気筒ターボエンジンと四輪駆動システムを融合させたクーペやワゴンを完成させていたが、不充分だった。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/欧州仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/欧州仕様)

そこでアウディは、有力な協力相手を探した。シュツットガルトのポルシェが名乗りをあげ、コードネーム「P1」と呼ばれる新型の開発がスタート。アウディは従来以上の高性能モデルを得ることができ、ポルシェは経営資金を得ることができた。

今では想像し難いが、当時のポルシェは業績が厳しかった。両社にとって、悪い条件ではなかったといえる。

ポルシェはそれまでの技術を活かし、サスペンションとブレーキを再設計。S2に搭載されていた2.2L直列5気筒エンジンにも手が加えられ、大きなターボチャージャーが組み合わされ、最高出力320psと最大トルク44.1kg-mが引き出された。

またRS2では、964型や993型911のハードウエアの一部が用いられている。柔らかいカーブを描くアルミホイールやフォグライト、ドアミラーなどは、ポルシェのものだとわかるだろう。

0-48km/h加速はマクラーレンF1より鋭い

RS2が生産されたのは、ポルシェのツッフェンハウゼン工場。当時はメルセデス・ベンツ500Eも生産されており、過去にはポルシェ959も作られていた、由緒正しき場所だ。

1994年から1995年という短い期間に、2891台がラインオフ。当初の予定は2200台だったが、市場の反響が大きく増産されている。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/欧州仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/欧州仕様)

既に誕生から30年近くが経つRS2だが、改めて目の辺りにすると、その完成度には驚かされる。ドライビング体験は、想像以上にモダンで洗練されている。

ステアリングホイールは軽く回せ、一定の情報が伝わってくるため、コミュニケーションが取りやすい。乗り心地は硬めながら、不快なほどではない。

大径タービンを採用しただけあって、エンジンのターボラグは大きい。アクセルペダルを踏み込んでも、3000rpm以下では目立った反応を得られない。しかし、レブカウンターの針がそこを超えると、我慢していたものが弾けるように、一気呵成に加速を始める。

1994年にRS2へ試乗したAUTOCARでは、0-97km/h加速を試し、4.8秒でこなすことを確認している。アウディの公称値は5.4秒だったにも関わらず。

加えて、0-48km/h加速だけを見れば、スーパーカーのマクラーレンF1よりも鋭かった。もちろん、現在でも不満なく速く感じるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    オリバー・ヤング

    Oliver Young 

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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