クルマの認証不正、なぜ起こるのか? 日野に次いでダイハツも 「開発」「実験」を取り巻く課題

公開 : 2023.05.01 18:05  更新 : 2023.05.01 18:37

ダイハツが明かした「衝突試験」での不正。なぜ、開発の現場でこうした行為が発生するのでしょう? 実験・認証について掘り下げました。

相次ぐ緊急会見 「衝突試験」とは

ゴールデンウィーク直前の2023年4月28日の夕方から夜にかけて、ダイハツトヨタが相次いで緊急記者会見を行った。

会見の内容は「側面衝突試験での認証不正」についてだ。

マレーシア市場向けの5人乗り小型車「プロデュア・アジア(AXIA)」。2月の生産開始以来、1.1万台を販売している。
マレーシア市場向けの5人乗り小型車「プロデュア・アジア(AXIA)」。2月の生産開始以来、1.1万台を販売している。    ダイハツ

そう言われても、自動車ユーザーはもとより、一般消費者にとっても、「衝突試験」や「認証」については、ほとんど知られていないことだと思うので、順を追って見ていく。

まず、側面衝突試験とは、車内に乗員に見立てたダミー人形を置いた状態で、クルマの真横から台車を衝突させるもの。その結果、ダミー人形の頭部、腹部、腰部に受けた衝撃のデータや状態によって、乗員保護の性能を評価する(独立行政法人 自動車事故対策機構のホームページから一部抜粋)。
 
今回ダイハツが行った側面衝突試験は、国際連合での協議による国際規則(協定規則第95号・UN-R95)に基づくもの。ダミー人形の頭部の加速度など乗員保護に関する基準値に加え、燃料漏れ・感電防止などの技術的要件も加味(国土交通省関連資料より一部抜粋)している。

衝突試験には側面衝突のほか、コンクリートの壁に正面から衝突させる「フルラップ前面衝突試験」、クルマ・建物などとクルマの前面の一部の衝突を想定した「オフセット前面衝突試験」、さらに追突時の「後面衝突」で頸部への障害を考慮した試験などがある。

クルマの認証 明かされた「細工」

次に、不正の対象となったクルマの「認証」とは何か?

これは、道路運送車両法の規定で、衝突試験、排出ガス試験、燃料消費試験、制動装置(ブレーキ)試験などについての適合性について技術的に審査すること。

タイで販売される「トヨタ・ヤリス・エイティブ」のエアバッグ展開イメージ。
タイで販売される「トヨタ・ヤリス・エイティブ」のエアバッグ展開イメージ。    トヨタ・タイ法人

認証審査は、国土交通省の所管である自動車技術総合機構・交通安全環境研究所が行う。

これら認証の審査に合格すると、新車として製造販売するための型式指定を受けることができる。また、日本国内で行う認証は、他の締結国でのその国の基準に適合する(以上、交通安全環境研究所ホームページより一部抜粋)。
  
ここで、ダイハツの認証不正の話に戻す。

認証に関する衝突試験は、ダイハツ開発本部 滋賀テクニカルセンター(滋賀県蒲生郡竜王町)で行われた。海外市場向けということで、前述の国際規則「UN-R95」での実施だったという。

では、具体的にどのような不正行為が行われていたのか?

ダイハツの会見では「認証する車両の前席ドア内張り部分の内側に、不正な加工を行った」と説明した。一般的には、ドアトリムと呼ばれる部分だ。

そこを「壊れやすく細工した」という。

「壊れやすく」とは、いったいどういうことなのか? 普通に考えると、側面衝突試験での結果を良くするには、部品の強度を上げて「壊れにくく」すると思う人が少なくないはずだが……。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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