シトロエンe−C4X 詳細データテスト 

公開 : 2023.05.13 20:25  更新 : 2023.06.09 15:57

結論 ★★★★★★★☆☆☆

所詮このe−C4Xは、電動ハッチバックのニッチな派生モデルで、商業的な大成功は見込めないだろうと切り捨てるのは簡単だ。しかし、実際にはそれ以上のものを見せてくれるクルマだった。

なによりもまず、急拡大を続けるファミリー向けEV市場において、コストパフォーマンスの高い選択肢だ。これは歓迎したい。このカテゴリーをバラエティに富んだものにしてくれるという点も喜ばしい。

結論:ほかとは違うEVの走りとコストパフォーマンスが際立つが、成功を認められる要素も見出せる。
結論:ほかとは違うEVの走りとコストパフォーマンスが際立つが、成功を認められる要素も見出せる。    LUC LACEY

シトロエンがコンパクトなファミリーカーに新たなコンセプトを持ち込んだり、独自のテイストやプライオリティを顧客に提供する能力は、このクルマを多くの競合車とは似ていないものに仕立てている。ひととは違うものがほしいなら大いに気にいるだろうし、クルマの出来は非常によく、しかも価格は手頃だ。

残念だったのは、シトロエンがサスペンションのテクノロジーやチューニングに関して、スタイリングほどの冒険をしなかったことだ。というのも、そのことで、快適志向に大きく寄せたはずの走りのアイデンティティをより明確に打ち出すことができなくなってしまっているからだ。

同じく、キャビンの広さや航続距離の向上、急速充電の性能アップも果たせていないのが悔やまれる。

それでも、価格を考えれば、このシトロエンの提案にケチをつけるのは難しい。値付けは上々で、個性も多少なりとも打ち出せているクルマだ。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース

個人的には、e−C4Xの効率面の大胆さは好意的に見ている。航続距離を伸ばそうと思ったら、バッテリーのサイズも重量も増し、少ない見返りを打ち消してしまいかねない。しかし、エネルギー回生のマニュアル調整が追加されれば、もう少しドライビングを楽しめるだろう。

イリヤ・バプラート

e−C4と比べて思うのは、この2台が同時に企画とデザインを行なったものなのか、ということ。一般的なハッチバックのC4と、リアエンドが伸びたリフトバックスタイルのC4Xを併売することが、より広い購買層へのアピールにつながるのか、是非とも知りたいところだ。

オプション追加のアドバイス

エントリーグレードのセンスでも、重要な装備の欠如はたいしてない。595ポンド(約10万円)のメタリック塗装と、180ポンド(約3万円)のリアパーキングカメラは追加したい。

改善してほしいポイント

・スタビライザーのレートを落として、シャシーチューニングを完全にコンフォート志向にしてほしい。そして、前後輪からボディへ伝わるノイズやショックの遮断を改善してもらいたい。
・シートの快適性は要改善。最低限、座面の角度調整は必要。あと、サイドサポートも修正してもらいたい。
・回生ブレーキ調節用のパドルがあれば、リアルな航続距離をもっと伸ばせるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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