新パワートレインで418kmへ シトロエンE-C4 E-シリーズへ試乗 豊かなデザインが生む訴求力

公開 : 2023.10.14 19:05

高密度バッテリーと高効率モーターを獲得 航続距離418kmへ伸長 スタイリングも僅かにリフレッシュ 英国編集部がフランスで評価

小改良で新バッテリーとモーターを獲得

シトロエンE-C4は、コンパクト・ファミリーハッチバックのカテゴリーで、電動化のパイオニアだったわけではない。英国市場へ投入されたのは2020年で、既に低価格帯のバッテリーEVはある程度出揃っていた。

しかし、その結果シトロエンらしさを追求することが許されたといえる。個性的なスタイリングを身にまとい、他とは異なる選択肢として、従来的なポジショニングが維持されている。

シトロエンE-C4 115KW E-シリーズ(欧州仕様)
シトロエンE-C4 115KW E-シリーズ(欧州仕様)

そんなE-C4は、アップデートを受け実力を強めたようだ。これまでにもメカニズムや装備の見直しは度々行われてきたが、本格的なフェイスリフトが2023年仕様として施されている。とはいえ、見た目の変化度合いは限定的ではあるが。

空力特性が磨かれ、エネルギー効率が改善され、航続距離が僅かに伸びたというのは、近年のバッテリーEVでは定番といえる内容だろう。50kWhの駆動用バッテリーを積むベーシックなモデルでは、1度の充電で走れる距離が355kmへ増えている。

だが、今回のトピックで注目すべきは、ロングレンジ仕様が追加されたこと。ニッケルの割合を増やした新しい駆動用バッテリーを採用し、54kWhの容量が選べるようになったのだ。

これに合わせて、駆動用モーターの最高出力も136psから156psへ強化されている。ちなみに、スポーツ・モードを選択した時のみ、フルパワーが開放される。モーターの構造も、永久磁石同期式からハイブリッド同期式と呼ばれるものへ進化したという。

航続418km 想像力が豊かに発揮されたデザイン

このロングレンジ版は、英国では新しいトップグレードになるE-シリーズ・グレードへ設定される。高音質オーディオにブラックのツートーン・ルーフ、専用アルミホイール、アルカンターラ内装などで仕立てられ、差別化が図られている。

車重は、従来のE-C4と同じ1561kgに収まるが、新しいパワートレインの方がエネルギー効率は高い。航続距離は418kmがうたわれる。

シトロエンE-C4 115KW E-シリーズ(欧州仕様)
シトロエンE-C4 115KW E-シリーズ(欧州仕様)

英国価格は3万7195ポンド(約673万円)から。ヒョンデルノーフォルクスワーゲンといったメーカーは、同価格帯で同等以上の距離を走れる、競合クラスのバッテリーEVを提供している。競争が楽になったわけではない。

今回の試乗車は、英国市場へ投入される仕様と同一ではなかった。それでも、想像力が豊かに発揮されたスタイリングやインテリアは、他にはない訴求力を生んでもいる。少々安っぽい素材が一部の内装に用いられているが、気になりにくい。

フロントシートは座り心地が良く、メーター用モニターもインフォテインメント用タッチモニターも、表示が鮮明で見やすい。実際に押せるハードボタンがエアコン用などに残され、操作性も悪くない。

メーター用モニターは小ぶりながら、運転中に必要な情報をシンプルに表示してくれるため、むしろ好印象。ヘッドアップ・ディスプレイも備わる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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