シトロエンe−C4X 詳細データテスト 

公開 : 2023.05.13 20:25  更新 : 2023.06.09 15:57

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

シトロエンが自社のクルマで目指す、労力の少ない、快適志向の運動性は、e−C4Xにも当てはまる。それは十分に感じられるが、並外れていいというほどではない。

それでも、ハンドリングの正確性をないがしろにはしていない。といえるのは、1980年代のBXや1990年代のZXのように走らせると、単なる今風のファミリーカーとは言い切れない感覚があるからだ。

快適志向はほぼ狙い通りで、どんな道でも楽に、穏やかに走ってくれる。ハンドリングは整っていて、日常使いに適したアクセスしやすいパフォーマンスをみせる。
快適志向はほぼ狙い通りで、どんな道でも楽に、穏やかに走ってくれる。ハンドリングは整っていて、日常使いに適したアクセスしやすいパフォーマンスをみせる。    LUC LACEY

走りにソフトさやダンパーの効いた感じはあるが、過剰なふわつきやロールはない。路面を隆起が横切るようなところでは、前後サスペンションが理想的な働きを見せ、ショックの吸収はじつに穏やかだが、マンホールや小さめのバンプなど、左右輪で異なる入力への対処は、そこまで穏やかではない。

カントリーロードで上下に動かされたときに見せる、ロール軸を中心にした挙動からわかるのは、縦方向より横方向のほうがサスペンション剛性が高いということ。スプリングは柔らかいが、スタビライザーは硬め、といったほうがわかりやすいかもしれない。

そのスタビライザーは、コーナリングでのロールを抑え、シトロエンが望む高速安定性を確保する。いっぽうで、クラシックなフランス製高級サルーンをダウンサイジングした現代解釈版を期待しているなら、それに添う走りは得られない。

グリップレベルはほどほどライトだが、スムースなカーブであれば活気あるコーナリングスピードを保てるくらいには強い。ステアリングはとくに低速域では軽いが、高速域では手応えが重くなる。スポーツモードでは、その傾向が顕著だ。

そのため、ハンドリングの気まぐれさや過敏さを感じさせる大きなリスクはない。同時に、路面の感触もない。

電動パワートレインはそれほどイージーにハイペースで走れないが、速度を上げすぎると、ロードホールディングのマージンがじつに小さいことが感知できるが、常に作動しているスタビリティコントロールがうまく制御してくれる。

限界域での挙動は安定していて、アンダーステア傾向。しかし電子制御系が、かなり攻めない限りはそこに達するのを防いでくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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