野性味濃いV12エンジン ランボルギーニ・エスパーダ アヴェンタドール・ウルティマエ 前編

公開 : 2023.07.15 07:05  更新 : 2023.07.15 08:51

過小評価されてきた2+2のエスパーダ

ダラーラは、ドライサンプ・オイルシステムをウェットサンプ式へ置き換え、ダウンドラフトのウェーバー・キャブレターをサイドドラフトへ変更。280ps/6500rpmを発揮するよう、マイルドにデチューンを施した。

量産が始まると、排気量は程なくして3929ccへ拡大。このユニットは後継モデルのランボルギーニ400GTへ採用され、ミドシップのミウラにも積まれた。その後、FRレイアウトのエスパーダとイスレロ、ハラマのボンネットにも収まった。

ランボルギーニ・エスパーダ S3(1968〜1978年/欧州仕様)
ランボルギーニ・エスパーダ S3(1968〜1978年/欧州仕様)

最高出力は、主にカムシャフトの違いでモデル毎に調整され、最もハイチューンな状態といえたミウラ SVでは390ps。初期のカウンタックの動力源にもなった。

1968年に発表された2+2のグランドツアラー、エスパーダは、華やかな2シーター・スーパーカーたちの陰になり、過小評価されてきたランボルギーニといえる。しかし最近は、エキサイティングなクラシックカーとして注目を高めている。

低く長いボディには4脚のシートが組まれ、フロントにはスーパーカーと同じV12エンジンが収まる。マルチェロ・ガンディーニ氏が描いたスタイリングは、2023年にあっても魅惑的。ベルトーネ社のコンセプトカー、マルツァルがその源にある。

今回ご登場願ったエスパーダは、1973年式。後期に当たるシリーズ3(S3)だ。

低く寝かされたバケットシートはレザー張り。着座位置は極めて低く、アスファルトでお尻を擦らないか少し心配になる。見惚れるほど長いボンネットが伸び、左右に切り込まれたNACAダクトが、タダモノではないことを想起させる。

遥かに野性的で、厚みがあるサウンド

前方で熱を放つのは、3929ccのV型12気筒。各バンクに2本のカムが組まれ、その上部に6基のツインチョーク・ウェバー・キャブレターが整列する。最高出力は370ps/7500rpm、最大トルクは41.4kg-m/5500rpmがうたわれた。

ボローニャ郊外の一般道を走らせる。エスパーダのボディは、圧倒されるほど幅が広く感じられるが、実は1867mmしかない。

ランボルギーニ・エスパーダ S3(1968〜1978年/欧州仕様)
ランボルギーニ・エスパーダ S3(1968〜1978年/欧州仕様)

アクセルペダルを少し傾けるだけで、4本出しのマフラーから聴き応えのあるシンフォニーが奏でられる。発売当時は、世界最速の4シーターモデルだった。0-97km/h加速を6.5秒でこなし、最高速度は254km/hに届いた。

フェラーリのV型12気筒のように、完璧に調律された音色とは異なる。遥かに野性的で、厚みがある。荒々しい雄牛のロゴと、よく似合う。

パワーステアリングが装備され、ステアリングホイールは軽すぎるかもしれない。大きなボディを、車線の中央には留めやすい。

重心位置は今の基準でも低く、前後の重量配分は52:48と理想的。前後ともダブルウイッシュボーン式のサスペンションが長いボディを支え、優れたシャシーの能力を簡単に引き出せる。

見た目の印象を裏切るほど、エスパーダの身のこなしは敏捷。乗り心地はしなやかでも、ボディロールは最小限だ。

タイトコーナーからの立ち上がりで右足へ力を込めると、フロントノーズを小さく震わせ、怒涛の突進が始まる。躊躇なくノイズを撒き散らしながら。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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