メルセデスAMG GT 詳細データテスト 純粋さを欠く動力系とハンドリング 気になる高周波ノイズ

公開 : 2023.07.01 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

このクルマの重さ、狙ったさまざまな役割、そしてハイブリッドパワートレインの複雑さは、ここ30年ほどで最高レベルのスーパーサルーンやGTが見せてきたような走りの魅力を追求する上では、どれも多少の制限が必要だった。

このクルマの実力を測るには、運動性の高い水準に照らしてしまう。なにしろメルセデスAMG史上最強のロードカーなのだ。その先入観なしに判断することは難しい。センセーショナルな動力性能を目にした後だが、ドライビングのきらめきがやや失われはじめたところとあっては、そこを再考する意味は大きい。

V8ハイブリッドのパワーはとてつもないが、それを多少は犠牲にしてでも、曲がりくねったB級道路での路面からステアリングホイールへのフィードバックが増してほしい。
V8ハイブリッドのパワーはとてつもないが、それを多少は犠牲にしてでも、曲がりくねったB級道路での路面からステアリングホイールへのフィードバックが増してほしい。

アダプティブエアサスペンションが見せる走りは、選んだモードによって、そこそこ快適からそこそこ硬めまで変化する。ボディコントロールは日常使いに向いたもので、上下方向も横方向も、非常識なほどスピードを出すか、過酷なカントリーロードやサーキットでも走るかしない限り、スタビリティやグリップに問題を起こさないレベルの振幅で済む。

ツーリングでの快適性もまずまずで、客観的に見ても長距離走行に堪える沈着さはかなりのものだ。しかし、路面を感じ取れるフィールは、意味をなすほどには備わっていない。タイヤには、前後アクスルにどれくらい負荷がかかっているか判断するのに必要な一体感がほとんどない。路面への食いつきも不足気味だ。ドライバーに自信を与えてくれるようなダンピングは、備わっているのだが。

それらがすべて高得点だったスーパーサルーンは、今のところBMW M5CSが最後だ。

GT63S Eパフォーマンスのスタリングはかなり重く、驚くほどダイレクトさがある。しかし、役に立つフィードバックが手元に感じられるのは、ほんの一瞬だ。ギア比はクイックなはずだが、ハンドリングバランスはややダルく、大抵の走行モードでは鼻先主導の動きを見せる。気楽に付き合える身のこなしや、生まれ持ったような敏捷性には欠ける。どこまでアジャストが効いて、どこまで無理を受け入れてくれるのか、とことん突き詰めたくなるようなハンドリングの精密さも見出せなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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