スーパーカーとグランドツアラーを両立 メルセデスAMG GT 63へ試乗 上質で大人なクーペへ

公開 : 2023.11.18 19:05

SLとベースを共有する2代目GT 四輪駆動とリアシートを獲得 V8ツインターボで63は585ps スーパーカーとグランドツアラーを見事に両立 英編集部が試乗

サーキットをホームとする速さも忘れない

メルセデスAMGの新CEO、ミハエル・シーベ氏に2代目GTに対する意見を求めれば、9年前の初代をあらゆる面で改めた、革新的なモデルだと話すだろう。開発時のプレッシャーが、従来以上だったことは間違いない。

長年、高い評価を集めてきたフロントエンジンのスーパーカーを、高級グランドツアラーの領域へ拡大することが目指された。フラッグシップとして幅広い能力を備え、多様な顧客層へ響くモデルが狙われている。「GT」という、モデル名の通り。

メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)
メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)

2014年から2022年まで生産された、初代GTのオーナーからフィードバックを受けて、方向性が決められたという。季節を問わない長距離移動の快適性を追求しつつ、サーキットをホームとする速さも忘れていないと、シーベは説明する。

その実現のため、新しいGTはロードスターの新型SLとスペースフレームを共有する。四輪駆動となり、+2のリアシートを獲得した。ボディシェルは主にアルミニウム製だが、マグネシウムやカーボンファイバーも多用し、軽量化されている。

スタイリングには、初代GTへ通じる雰囲気が漂う。ロングノーズのプロポーションや丸みを帯びた面構成は、明らかにそうだろう。特有のアイデンティティがある。

ボディサイズは、全長4728mm、全幅1984mm、全高1354mm。広い車内空間を得るため、全方向で拡大した。車重は、初代から270kg増しの1895kg。前後の重量配分は、47:53から54:46へ前寄りになっている。

V8ツインターボで55は475ps 63は585ps

エンジンは、新しいSLと同じ。4.0L V8ツインターボガソリンで、GT 55では最高出力475psと最大トルク71.2kg-mを発揮。GT 63では、585psと81.4kg-mへ増強される。

インタークーラーは位置が変更され、吸排気系とオイルパンは新設計。クランクケースにも、ベンチレーション機能が追加された。エンジンマウントは、磁性流体を用いた可変式となる。

メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)
メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)

トランスミッションは、初代はトランスアクスルだったが、2代目はフロント側へ移動。湿式クラッチを採用した、9速オートマティックがエンジンへボルトで固定される。豊かなパワーを活かしきるため、4マティック+と呼ばれる四輪駆動が標準だ。

現時点では、電動化技術は導入されていない。もちろん、AMGは開発を進めている。

サスペンションは、前後ともアルミニウムが主な素材の5リンク・サスペンション。SLと同じく、スチールスプリングにアダプティブ・ツインバルブダンパーが組まれ、圧縮・伸長の減衰力が個別に調整される。

アクティブ・ライドコントロール・システムも搭載される。アンチロールバーは組まれず、フルード量を調整するアクチュエーターが、ボディの傾きを制御する。後輪操舵システムも標準。100km/hまでの速度域で、リアタイヤが最大2.5度まで切られる。

リアには、電子制御のリミテッドスリップ・デフとブレーキ制御によるトルクベクタリング機能も備わる。ドリフト・モードなど、多様なドライブモードも実装される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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