相次ぐ高級車盗難事件 メーカー懸念も「最新モデルでは解決」 保険料に影響も

公開 : 2023.07.13 06:25

英国ではレンジローバーやレンジローバー・スポーツといった高級車の盗難事件が多発しています。自動車保険にも大きな影響が出ていることから、JLRは盗難リスク低減に向けた取り組みを進めています。

深刻化する盗難被害 最新モデルでは減少傾向に?

英国の自動車メーカーであるJLR(ジャガーランドローバー)は、レンジローバーやレンジローバー・スポーツなどの高級車の盗難被害が相次いでいることについて、同社にとって懸念事項であることを認めたが、最新モデルでこの問題を解決したと主張している。

JLRのエイドリアン・マーデルCEO代理は、最近の投資家向け説明会でアナリストに対し、英国のロンドンとマンチェスターを最悪の盗難被害地として挙げた。

英国ではレンジローバーやレンジローバー・スポーツ(写真)の盗難被害が相次いでいる。
英国ではレンジローバーやレンジローバー・スポーツ(写真)の盗難被害が相次いでいる。

今年初め、AUTOCARの調査によると、英国ではレンジローバーの盗難リスクが非常に大きくなっているため、所有者は自動車保険の加入が難しくなっていることがわかった。

英国のDVLA(運転免許庁)は、2022年のレンジローバーの盗難件数は英国で2番目に多く、5200台以上が盗まれたと発表している。

JLRのマーデル氏曰く、確認された盗難は「ほとんどが古い構造」のレンジローバーとレンジローバー・スポーツだったという。

同社は販売終了した前世代のレンジローバーに対し、盗難を減らす2つのアプローチを導入している。1つ目は、車両へのリモートアクセスを可能にする「InControl」アプリのログイン情報が、新しい所有者に正しく引き継がれているかどうかを確認すること。2つ目は、セキュリティを監督する車体制御モジュールの更新だ。

「やるべきことはたくさんあります。しかし、当社のデータは、これら2つのアクションによって、車両盗難が大幅に減少していることを物語っています」とマーデル氏は語った。

一方、MLAプラットフォームを採用した最新のレンジローバーおよびレンジローバー・スポーツの盗難は、発売から1年が経過しているにもかかわらず、「ゼロに極めて近い」という。

盗難事件があまりにも多発したため、JLRは昨年、提携先の保険代理店Verexが補償を拡大しないと発表したことで、独自の保険販売を中止せざるを得なくなった。

盗難率の高さは、保険に大きな影響を及ぼしている。ロンドン北部に住むダン・アドラーさんが2月にAUTOCARに語ったところによると、彼が購入したレンジローバーP440eオートバイオグラフィーは、保険料を600ポンド(約110万円)と見積もられたため、購入をキャンセルせざるを得なくなったという。

アドラーさんの他に保険加入を実質的に拒否された事例もあるが、こうした保険問題は販売の足かせにはなっていないようだ。レンジローバー・スポーツは6月末までに5133台を販売し、JLRにとって英国で2番目に売れたモデルとなり、レンジローバーは前年同期の2倍を超える3967台で4番目となった。JLRのベストセラーはディフェンダーで、3番目はレンジローバー・イヴォークだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニック・ギブス

    Nick Gibbs

    英国編集部ビジネス担当記者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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