揺るぎない頼もしさが湧く圧巻の走破性

ランドローバー・レンジローバー・エレクトリックの最高出力は、ツインモーターの合計で549ps。約2.8tという車重を考えると、大きな期待を抱かせる馬力ではない。しかし、舗装路ではV8エンジン版へ匹敵する動力性能を持つらしい。

今回はオフロードコースが中心で、30km/h程度の速度で走らせただけ。路面は乾燥状態で、真冬のぬかるんだような悪条件とはかけ離れていた。とはいえ、25度の傾斜や、起伏の大きい岩場などへチャレンジすることはできた。

果たして、試作車のレンジローバー・エレクトリックは軽々と悪路を走破。どんな地形でも、苦労する素振りはない。いとも簡単に、求めた速度へ達する。圧巻の走破性に、揺るぎない頼もしさが湧いてくる。

エンジンのように、トルクを振り絞るため、回転数が上昇することはない。露出した岩や木の根を乗り越える場面でも、アクセルペダルは半分も倒せば充分だ。

モーターへ最適化されたテレイン・レスポンス

モーターは非対称レイアウトで、オープンデフが組まれ、悪路ではブレーキの介入でトルクは制御される。ヤギが岩場を駆け登るように、足取りは終始安定。繊細にパワーを制御でき、タイヤがスリップする気配もない。

「テレイン・レスポンス」トラクション・コントロールは、駆動用モーターのトルクへ最適化されたと、技術者のサイモン・フェアブラザー氏は説明する。「従来より100倍も高速に、スリップしようとするタイヤを制御できます」

車内は平静でもある。聞こえてくるのは、エアコンの風音の他に、タイヤが跳ね上げる泥水や小石の音だけ。後輪操舵システムが標準装備で、ボディは大柄でも小回りは得意。立木の間でも、想像以上に取り回しやすい。恐らく、狭い駐車場でも。

他方、最低地上高はエンジン版のレンジローバーより30mm低く、260mm。路面とボディが接する角度も、僅かに減じている。だが900mmの渡河水深と、45度の登坂能力は変わらないという。バッテリーのケースは堅牢で、相当な衝撃にも耐えるそうだ。

お値段は英国で2925万円前後？

アスファルト上での印象は、僅かにしか確かめられていないが、静寂性は見事。常に穏やかな気分で、先を急げそうだ。低速域の限り、路面の凹凸はエアサスペンションが巧みに均していた。

ランドローバーは、現実的な航続距離を480km程度だと計算している。オフロードコースを走り回り、バッテリーの充電量が半分へ減った状態で、更に約250km走れると表示されていたから、恐らくその主張通りだろう。

急速充電の速度などは、まだ非公表。電圧800Vの電動アーキテクチャで、市場トップクラスの充電速度を叶えると、自信を滲ませていたが。

最後に、英国でのお値段は、15万ポンド（約2925万円）前後と予想されている。お高めといえるが、既に6万件以上の問い合わせが入っているそうだ。

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