縦目の新世代 メルセデス・ベンツW114/W115型 4ドアサルーンと2ドアクーペ 前編

公開 : 2023.09.03 17:45

メルセデスの新世代を象徴するモデルといえた、W114型とW115型。多彩なバリエーションの一部、5種を英国編集部がご紹介します。

進化に余念がなかったメルセデス・ベンツ

クロームメッキの太いバンパーがフロントで輝いていた時代から、メルセデス・ベンツは進化に余念がなかった。綿密に計画を立案し、秀でた結果を残し続けてきた。

1953年に発売されたW120型の180、通称ポントンは、モノコックボディを採用したブランド初のサルーンとして、戦後の成長を牽引。そのコンセプトは、1970年代まで受け継がれたといっていい。

ネイビー・ブルーのメルセデス・ベンツ250と、ブルー・シルバーの250CE
ネイビー・ブルーのメルセデス・ベンツ250と、ブルー・シルバーの250CE

丸みを帯びたボディは、凸型の3ボックス・シルエット。新しいスイングアクスル・サスペンションでリアアクスルを支え、オーバーヘッド・カム・エンジンを搭載していた。ディーゼルはタクシーとして活躍し、6気筒ガソリンは上級サルーンとして重宝された。

1959年に登場したW110型の通称フィンテールは、ファッショナブルなポントンともいえた。その後のW108型は、V6エンジンやV8エンジンが選べるフィンテールだといっても過言ではなかった。美しいパゴダルーフを背負うSLも、ポントンの延長にあった。

それでも1960年代半ばになると、メルセデス・ベンツの技術者はW120型やW110型の後継を担う、中型サルーンの開発をスタート。生み出されたW114型/W115型には、1980年代後半までの技術的な基礎となる、新しいシャシーが与えられた。

直列6気筒のW114型と直列4気筒のW115型

1968年に発表された4ドアサルーンは、メルセデス・ベンツの新世代だと主張された。大きな驚きをもたらす内容はなかったものの、主力モデルに据えられていることは明らかだった。

選ばれたエンジンは、W114型では直列6気筒。W115型には、主に直列4気筒が搭載された。3.0L直列5気筒ディーゼルが、その例外を作ったが。

メルセデス・ベンツ240D(W115型/1973〜1976年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ240D(W115型/1973〜1976年/英国仕様)

メルセデス・ベンツのトランクリッドに貼られる数字が、少し混乱した時期でもあった。同じ230でありながら、直列4気筒は230.4、直列6気筒は230.6を名乗っている。

果たして、W114型とW115型は、8年間に合計180万台以上が生産された。これには、約6万7000台が売れた2ドアクーペのCとCEも含まれる。数1000台に登った、ロングホイールベース版のリムジンも。

市場の特性に合わせて、細かな調整も加えられた。例えばクーペの250では、現地の排出ガス規制に対応させながら充分な動力性能を与えるため、排気量の大きい280用エンジンが北米仕様には積まれていた。

当時を振り返ると、市場に合わせた仕様は31種類にも達したようだ。ディーゼルエンジンも多岐に渡ったが、最も多く作られたのは220Dで34万5000台。ギリシアでは240Dがタクシーとして活躍し、466万km以上という驚きの走行距離を刻んだ例もある。

シンプルで無駄のないボディラインに、ボッシュ社製の縦に長いヘッドライトが見た目の特徴。ひと回り大きいW108型やW109型とも雰囲気は近く、見間違えたとしても不思議ではないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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