■918スパイダー

先日、ポルシェが2ドアス・ポーツを一堂に集めて開催した試乗会の時にもパッセンジャー・シートから体験した、918スパイダーの走りだが、今回はそのステージがクローズされたテスト・コースではなく、走行シーンのバラエティに富む一般道に設定されていた。608psの最高出力を誇る4.6ℓのV型8気筒自然吸気エンジンをミッドに搭載し、それにエレクトリック・モーターを組み合わせ、パラレル式のハイブリッド・システムを完成。さらにフロント・アクスルを駆動するために、もうひとつのエレクトリック・モーターを搭載し、システム全体では887psの最高出力を発揮するというのが、918スパイダーのパワー・ユニットの概略だ。ミッションは7速PDK。前輪を駆動するエレクトリック・モーターは265km/hでクラッチが切断されるが、それまでは918スパイダーは4WDの駆動方式を持つことになる。

前回のパッセンジャー・シート試乗でも驚かされた、乗り心地の素晴らしさは、路面コンディションが刻々と変化する一般道でも、まったく変わることはなかった。基本構造体たるカーボン・モノコック、そして前後サスペンションの持つ、きわめて高い剛性がその印象を生み出す直接の理由。スタートからしばらくの時間は、Eドライブ・モードによるゼロ・エミッション走行を楽しんだが、この時のキャビンはまさに快適の一語。シートの背後からは、エレクトリック・モーターからのノイズが伝わるが、それもこの918スパイダーの場合には、ホットな走りを演出するかのようなサウンドに聞こえる。

6.8kWhのエネルギー容量を確保したリチウム・イオン・バッテリーを搭載する918スパイダーが可能とする、EV走行の航続距離は約16〜31km。それによってスタンダードな仕様でも72g/kmの、そしてより軽量なバイザッハ・パッケージでは70g/kmのCO2排出量を実現している。0-100km/h加速で2.6秒、最高速では345km/hという驚異的な運動性能を持つスーパー・スポーツであるにもかかわらずだ。

ステアリング・ホイールの右下にレイアウトされるロータリース・イッチで、Eドライブからハイブリッドへとドライブ・モードを変更すると、ミッドのV型8気筒エンジンがスタートする。キャビンがさらに官能的な空間となるのは、上方排気を採用したことも大きな理由だろう。さらにスポーツ・ハイブリッド、レース・ハイブリッド、そしてロータリー・スイッチの中央にある赤いスイッチをプッシュすると、最もスパルタンな走りが演出されるホット・ラップへと、ドライブ・モードは移行する。これほどまでに高性能で、かつ軽量なスーパー・スポーツであるから、どの走行モードを選択しても、その加速やストッピング・パワーには圧倒されるばかりだ。コーナリングのマナーも、常にナチュラルなものに終始している。この扱いやすさこそが、結果的には918スパイダーの速さを際立たせる理由なのではないか。918スパイダーは、ドライバーに常に優しいスーパー・スポーツなのだ。

(山崎元裕)

ポルシェ・カイエンS E-ハイブリッド

価格	£61,474(1,060万円)
最高速度	243km/h
0-100km/h加速	5.9秒
燃費	29.4km/ℓ
CO2排出量	79g/km
乾燥重量	2350kg
エンジン	V型6気筒2995ccスーパーチャージャー + モーター
最高出力	416ps/5500rpm
最大トルク	60.1kg-m/1250-4000rpm
ギアボックス	8速ティプトロニック

ポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッド

価格	£88,967(1,406万円)
最高速度	269km/h
0-100km/h加速	5.5秒
燃費	32.2km/ℓ
CO2排出量	71g/km
乾燥重量	2095kg
エンジン	V型6気筒2995ccスーパーチャージャー +70kWモーター
最高出力	410bhp/5500rpm
最大トルク	60.1kg-m/1250-4000rpm
ギアボックス	8速オートマティック

ポルシェ918スパイダー

価格	£652,849(1億861万円) £712,088(1億1850万円)：バイザッハ・パック
最高速度	345km/h
0-100km/h加速	2.6秒 2.5秒：バイザッハ・パック
燃費	34.4km/ℓ
CO2排出量	72g/km
乾燥重量	1674kg
エンジン	V型8気筒4593cc + モーター
エンジン最高出力	608ps/8700rpm
エンジン最大トルク	55.0kg-m/6500rpm
モーター出力	129ps/21.3kg-m：フロント 156ps/38.2kg-m：リア
合計出力	887ps/8500rpm、130.5kg-m
ギアボックス	7速PDK