スズキ・スペーシア・カスタムTS(2WD)
公開 : 2013.07.26 19:37
一方室内は色やファブリックの素材感にちがいがある程度だが、見るべきは最新の軽自動車ならではの充実した装備だろう。ダブルエアバッグ、ABS、フルオートエアコン、スマホ連携ナビシステム、電動格納ドアミラー、本革巻ステアリング、キーレスエントリー、オート開閉の後席左右ドア等々、ひと昔前の高級装備が標準で備わっているのである。だがむしろ驚くべきは、ボックスティッシュホルダーのついたグローブボックスや、左右独立でリクライニングするリヤシートなど、日本人が生み出した軽自動車というカテゴリーならではのきめ細かな使い勝手に対する配慮だろう。国産ワンボックス普通車のリヤシートは前後左右にスライドし、自動車世界屈指の様々な可変が可能になっているが、3列目シートを持たない軽自動車でも、フルフラットの荷室からフロントシートを寝かせることでベッド的なスペースが生まれるなど、多様なアレンジが可能になっているのである。
試乗したのはターボエンジン搭載のTSだった。660ccからリッター100ps近い64psを搾り出すターボエンジンは、すぐにターボチャージャーの存在を感知できるほど個性的で、ワンボックス車であることを忘れてしまうほどクイックな走りを見せるが、一方でロールがしっかり抑えられているおかげでナロートレッド、ハイルーフというボディ寸法を感知させない。
近年は軽自動車も安全装備の増加等によって重量増が避けられない現状がある。スペーシア・カスタムの場合、前輪駆動タイプのTSは車重が900kgにもなるが、軽快な走りをそのままに、重量増が車体のしっかり感に繋がっている点も特筆すべきだと思った。一方自然吸気エンジンを搭載するXSは、それでも52psもあるので、TSよりもいくぶんしっとりとしたドライブフィールと相まって、バランスの良い1台だと感じられた。
発電に無駄なガソリンを使わないエネチャージシステムやアイドリングストップ機構、視覚的にエコドライブをサポートするメーター照明、そして効率の良いターボユニット等によって、カスタムTSの燃費はJC08モードでクラストップの26km/ℓを確保しており、もちろん全グレードで免税の対象となっている。カスタムの車両価格はGSの140万円台からTSの180万円台に設定されており、軽自動車のライバルと比べた場合は高めに位置するが、しかし走りや装備、そして質感や環境性能といった総合的な性能を自動車界全体で比較した場合には、飛びぬけたレベルにあることを認識しなければならないだろう。
実用に徹した感のあるすっきりとしたスペーシアに比べると、遊び心に溢れるスペースア・カスタムは購入してからオーナーがとくに何かを追加することなくスペシャルな気分を楽しむことのできる、時代にマッチした1台といえるだろう。
(文・吉田拓生 写真・花村英典)
スズキ・スペーシア・カスタムTS(2WD)
| 価格 | 162.75万円 |
| 公称燃費(JC08モード) | 26.0km/ℓ |
| CO₂排出量 | 89g/km |
| 車両重量 | 900kg |
| エンジン形式 | 直3DOHCターボ, 658cc |
| エンジン配置 | フロント横置き |
| 駆動方式 | 前輪駆動 |
| 最高出力 | 64ps/6000rpm |
| 最大最大トルク | 9.7kg-m/3000rpm |
| 馬力荷重比 | 71.1ps/t |
| 比出力 | 97.3ps/ℓ |
| 圧縮比 | 9.1:1 |
| 変速機 | CVT |
| 全長 | 3395mm |
| 全幅 | 1475mm |
| 全高 | 1735mm |
| ホイールベース | 2425mm |
| 燃料タンク容量 | 27ℓ |
| サスペンション(前) | マクファーソン・ストラット |
| サスペンション(後) | トレーリングリンク |
| ブレーキ(前) | ディスク |
| ブレーキ(後) | ドラム |
| タイヤ | 165/55R15 |


