爆音EVの愛嬌 アバルト500e上陸 試乗へ 個性派の誕生

公開 : 2023.11.17 21:55  更新 : 2023.11.18 08:00

電動化された話題のアバルト500eを試乗に連れ出しました。搭載されるバッテリーはフィアットもアバルトも同じ容量ですが、クルマの仕立てには大きな違いがあるようです。ファーストインプレッションをどうぞ。

新登場アバルト・チンクェチェントイー

新登場のアバルト500eは末尾のアルファベットeが示す通りのフルEV。そしてもちろん、フィアット500eのアバルト版である。ちなみに500eの読み方はゴヒャクイーではなくチンクェチェントイーだ。

フィアット500eの最高出力が118psであるのに対し、アバルトは155psだ。一方床下に搭載されているリチウムイオンバッテリーの容量はフィアットもアバルトも42kWhで同じ。結果的にWLTCモードで比べると、フィアット500eが335km走るのに対し、アバルト500eは303kmと1割ほど減ってしまう。

アバルト500e
アバルト500e

とはいえ最高出力が約3割増しなのだから「得している?」と言えなくもない「電動サソリ」なのである。

数値的な理屈っぽい話から入ってみたが、アバルト500eの白眉は言わずもがな、一目でアバルトだ! とわかるその見た目にある。今回の試乗車はアバルト500eのテーマカラーの中で最もインパクトが強いアシッドグリーンに塗られていた。それ以外の3色アンチドーテホワイト/ベノムブラック/アドレナリンレッドも存在感強めのカラーリングであり、アバルト500の存在感を後押ししている。

またフィアットの場合フロントマスク中央に500の文字が入るが、アバルト500eはABARTHと掲げられているので間違いようがないのもいい。それ以外にもフロントバンパー/ホイール/エンブレム類などがアバルト専用装備として独特のオーラを放っている。

電動サソリのバツとマル

言ってもフィアット500eのパワフルなやつ程度に思っていたのだが、最初の加速で面食らってしまった。うるさい! というか聞きなれたレコードモンツァマフラー風の排気音が鳴り響くのだ。

静かすぎるのはマズいということでEVが音を追加することは珍しくないが、アバルトのそれは完全に作為的。サウンドジェネレーターと呼ばれるシステムはリアフェンダーの内側あたりから音をまき散らしているらしい。

アバルト500e
アバルト500e

この音は賛否両論あるだろう。さっそく音を消すスイッチを探してみると、それがメーター内のオンボードコンピューターの深い階層にしまわれ、容易にオンオフできないようになっていた。簡単に物理スイッチでオンオフできるなら、アバルトらしい音もありだとは思うのだが……

アバルト500eは155psというスペックから想像される以上に加速が鋭いし、引き締まったサスペンションも負けていない。だが今回なにより感心させられたのは、EVなのにEV臭さがないということかもしれない。EVのドライブフィールを象徴する床下バッテリーの重ったるさが感じられないのだ。

硬いサスと床下バッテリーの重さ、そして4輪のディメンジョンが絶妙なのか、姿勢変化は最小限に抑えられているが、すっきりとして違和感がない。EVである前にアバルトありき。音はともかく、動力源が電気になってもサソリは健在。その完成度は高いと感じた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。BMW 318iコンパクト(E46)/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    1986年生まれ。クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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