英国人の共感を呼ぶSUV ランドローバー・レンジローバー 長期テスト(1) PHEVのP440e

公開 : 2023.08.05 09:45  更新 : 2023.08.24 09:08

新世代へ生まれ変わり、上級志向を強めた5代目レンジ。理想的な高級SUVといえるのか、英国編集部が長期テストで確かめます。

初回 多くの人の関心を集めるSUV

「ピアス、すっかり恋に落ちちゃったわ」。妻から、電話で衝撃の一言。

数時間会わないうちに、不倫問題が降り掛かってきたのかと一瞬勘違いしたが、後ろに座っている息子がうれしそうに叫ぶ。「これって最高のクルマだね」

ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)
ランドローバーレンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)

学校へ子どもを迎えに行った妻は、長期テスト車のランドローバー・レンジローバーを心底気に入ったらしい。実際、これほど多くの人の気持ちを掴み、関心を集めるクルマを運転したことは、これまで筆者もなかった。

駐車場では、頻繁に声をかけられる。値段はいくらなのか、譲ってもらえないか、と。お気に入りのブーツと同じ色で気に入った、と感想を話す知人もいた。英国の田舎らしい。

土地柄も、レンジローバーへ強い関心を示す理由になっているだろう。広大な農地や原野が広がるグレートブリテン島で、このSUVほど輝かしい歴史を長年築いてきたモデルは、他に例がないといっていい。

実際のところ、所有できた人は限られる。近年は、テスラモデルXやランドローバー・ディフェンダーも同等の役割を果たせる。それでも、レンジローバーと英国郊外に住む家族との深い関わりは、今でも多くの人の心象風景に残っている。共感を呼ぶのだ。

特別な気分にしてくれるインテリア

新しいレンジローバーは大きい。標準ホイールベース版のプラグイン・ハイブリッド、P440eがやってきたのだが、全長は5052mmもある。全幅は1990mm、全高は1870mmで、BMW X5が小さく見えるほど。狭い駐車場では気を使う。

駆動用バッテリーの容量は38.2kWhと大きく、カタログ上は最長175kmもエンジンを始動せず走れるとうたわれる。現実的には90km前後のようだが、それでも普段使いには不足ない。

ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)

エンジンは3.0L直列6気筒ガソリンターボのインジニウム・ユニット。143psの駆動用モーターとの協働で、最高出力は440ps、最大トルクは63.0kg-mを発揮する。0-100km/h加速は6.0秒でこなす。

ホットハッチのように鋭くは加速しないが、車重が2.8tもあることを考えれば不満はないだろう。お望みなら、更にパワフルなP510eも用意されている。

トリムグレードは最上級のオートバイオグラフィー。装備は極めて充実している。ダッシュボード中央には13.1インチのタッチモニターが据えられ、ピヴィ・プロと呼ばれるインフォテインメント・システムが稼働する。インターフェイスは扱いやすい。

シートは、フェイクレザーのウルトラ・ファブリックと、ウールのクヴァドラ生地で仕立てられている。化粧パネルは、マット仕上げのナチュラルブラウン・ウォールナット。

すべてが美しく上質で、特別な気分にしてくれる。お高めの価格にもうなずけるインテリアだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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