クルマ漬けの毎日から

2025.10.28

前半では兄弟モデルの「ルノー5 E-テック」と「アルピーヌA290」について、後半ではクロプリー編集長から読者の皆さまへ、日本版コラム20周年のメッセージをお届けします。

【祝20周年 クロプリー編集長コラム】アルピーヌA290とルノー5、どちらを選ぶ?

もくじ

アルピーヌA290で長距離ドライブ
兄弟のEV どっちを選ぶ?
日本版コラム20周年 心より感謝

アルピーヌA290で長距離ドライブ

同僚のマット・プライヤーと私はアルピーヌA290を運転して、600mile(約965km)の日帰りの旅をした。イングランド南部のオックスフォードシャーにあるマットの家から、北西部のカンブリア州コッカーマスまで、EVで往復したのだ。

その目的は、元ラリーチャンピオンで、現在はレースエンジニアリングの会社「Mスポーツ」のトップを務め、また今年からFIAのスポーツ担当副会長にも就任したマルコム・ウィルソン氏にインタビューすることだった。

この5か月間、私はルノー5 E-テックの長期テストを行なっており、これまでに1万1000mile(約1万7700km)走行してきた。なので、その兄弟モデルにあたるアルピーヌA290と比較できる機会を楽しみにしていた(上の画像)。

アルピーヌA290 GTS(英国仕様)

出発してすぐに、A290は優秀だとわかった。ただし、ルノー5よりもパワーがあり、空力性能があまり良くないことから、52kWhのバッテリーの航続距離はルノー5よりも30~40mile(48~64km)ほど少ない。これは長距離走行では、大きな数字である。

約13~18m/sの強い向かい風のなかを走行した時などには、俊足のA290をかなり低速で走らせた(もしルノー5を運転していたら、もっと高速で走っただろう)。十分な台数の充電器が整ったサービスエリアに、なんとしても辿り着かなければならなかったからだ。結果的には、目指す充電ステーションに到着できたが、気持ちにゆとりはなかった。

兄弟のEV どっちを選ぶ?

ルノー5か、それともアルピーヌA290か? 私にとっては簡単な選択だ。どのような場合でも、私はルノー5を選ぶだろう。

一方で、多くの人がA290のコンパクトで俊敏かつエキサイティングな走りと、今回試乗した限定モデル「プルミエール・エディション(Premiere Edition)」の特別なラグジュアリーを大いに気に入るだろう。

アルピーヌA290 GTS(英国仕様)

確かにアルピーヌA290のほうが、ステアリングフィールがわずかにシャープで、コーナーでの安定感も少し優れている。だが、ルノー5も十分に速い。それに軽快感も高い。とくに発進から50~60mph(約80~96km/h)まではそう実感できる。

また私の目には、ルノー5のほうが魅力的に見える(とくにポップ・イエローのボディカラーが気に入っている)。またソフトな乗り心地と、ロードノイズが低いことも嬉しい。だが、なんといっても決定的な要因は、一充電走行距離にある。

長期テストしているルノー5の場合、気温が下がってEVの航続距離が短くなりがちなこの時期でも、200mile(約320km)は走行できるので、自分の行動範囲や走り方に合っている。だがアルピーヌA290の場合、160mile程度(約260km)しか走れない。

多くの人にとっては十分な距離かもしれないが、私には足りない。だから私の選択は、ルノー5なのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    小島薫

    Kaoru Kojima

    ドイツ自動車メーカーの日本法人に在籍し、オーナーズマニュアルの制作を担当。その後フリーランスで翻訳をはじめる。クルマはハッチバックを10台以上乗り継ぎ、現在はクーペを楽しんでいる。趣味はピアノ。

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