1000万円級のプジョー205 GTiが「レストモッド疲れ」を癒やしてくれた 英国記者の視点

公開 : 2025.04.18 18:45

近年、クラシックカーのレストモッドが注目を集めていますが、非常に高価な限定生産車を作るのではなく、オリジナルの精神を精巧なエンジニアリングで完成させる企業も出てきています。AUTOCAR英国記者のコラムです。

大切なのはオリジナルのスピリット

筆者が初めてプジョー205を目にしたのは、4歳になるかならないかの頃だった。アルパインホワイトの1.9L GTiだった。

当時から、これは特別なクルマだと感じていた。ピニンファリーナがデザインしたシャープなラインは、筆者の脳裏に焼き付き、ホットハッチに夢中になるきっかけとなった。

トールマン・エディション205 GTi
トールマン・エディション205 GTi    AUTOCAR

筆者はこのクルマで学校に送迎してもらった。20年経った今でも、家族の一員として大切にされているが、現在はカバーに覆われ、ひどい状態にある。

しかし、205は見た目も良く、運転していて楽しいクルマだったが、同時に飼い慣らすのが難しいホットハッチでもあった。それだけでなく、さまざまなエンジントラブルにも悩まされる1台だった(どうしてそれを知っているのかは、言わずもがなだろう)。

だからこそ、英国ウォリックシャーの企業、トールマン・エンジニアリング(Tolman Engineering)が、プジョーの80年代を代表するホットハッチを本来あるべき姿に作り直し、改良し、微調整したと聞いて、どれほど歓喜したことか。

『トールマン・エディション205 GTi』は、一見するとレストモッドだが、多くの点でその定義に当てはまらない。レストモッド業者の多くは、オリジナルのクルマとはかけ離れた、途方もなく高価で非常に限定的なコレクターズアイテムの製作に固執しているように見える。

しかし、たとえ現代のテクノロジーを随所に取り入れたクラシックカーであっても、筆者はオリジナルのスピリットを守ってほしいと願っている。トールマンの205はまさにそれを実現してくれたのだ。

2023年にAUTOCAR英国編集部が試乗した際、トールマンGTiは公道とサーキットの両方で魅力的な走りを見せ、記者たちの心を掴んだ。

改良されたエンジンと巧みなディファレンシャルにより、コースを走るのは同時期に試したランボルギーニウラカン・ステラートと同じくらい楽しかった。

筆者が気に入っているのは、新旧のバランスだ。インストゥルメントクラスターは一見、オリジナルのヴェリア製のものに思えてしまうが、実際にはデジタルで再現されたもので、走行モードを「スポーツ」に切り替えるとT16風のメーターに切り替わる。実によくできている。

これが、愛好家がレストモッドに求める細部へのこだわりである。これほどまでに高性能で、現代的に改良されたマシンの価格は、果たしておいくらなのだろうか?

結論を言うと、6万ポンド(約1135万円)、フル装備のモデルではその2倍だ。

確かに高価ではあるが、天文学的な価格というわけではない。このクルマはかつて英国GT選手権で自らチームを運営していた会社が作り上げたものであり、同社は歴史的なレーシングカーのレストアで高い評価を得ている。

トールマンはロータスのレストアも手がけており、サンビーム・ロータスの改造版や、最近ではフォード・エスコートXR3iも製作している。

トールマンは明らかにレストア業界で存在感を示そうとしており、その野心的な姿勢は正当なものだ。

「もうあんなクルマは出てこない」と嘆く必要はもはやない。なぜなら、トールマンが作っているからだ。実際、さらに優れたクルマが生まれている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    役職:常勤ライター
    AUTOCARに加わる以前は、クルマからボート、さらにはトラックまで、EVのあらゆる側面をカバーする姉妹誌で働いていた。現在はAUTOCARのライターとして、トップ10ランキングや定番コンテンツの更新、試乗記や中古車レビューの執筆を担当している。最新の電動モビリティ、クラシックカー、モータースポーツなど、守備範囲は広い。これまで運転した中で最高のクルマは、1990年式のローバー・ミニ・クーパーRSP。何よりも音が最高。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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