VWビートルは終売 なぜフィアット500/ミニは生き残れている? 背景に存在価値

公開 : 2019.07.22 19:10  更新 : 2021.10.22 10:18

フォルクスワーゲン・ビートルの終売が決まりました。いっぽうで、「復刻車」として、フィアット500やミニは人気です。明暗をわけたワケを、市場や実用性の観点で考えます。

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

もくじ

長寿なのは65年間フルチェンしなかったタイプ1
現代の存在意義はファッション性のみ?
ニュービートル登場時とは市場環境に変化
購入は最後のチャンス カブリオレ狙い目
なぜミニ/フィアット500は生き残った?

長寿なのは65年間フルチェンしなかったタイプ1

フォルクスワーゲンには複数の車種が用意されているが、この中のザ・ビートルが生産を終えた。

フォルクスワーゲンの販売店によると「ザ・ビートルの国内販売は、現時点(2019年7月中旬)の在庫と、船積みされて日本に送られている車両が最後になります。すでに生産を終えたため、今後の新たな発注はできません。またザ・ビートルの後継車種の登場は、今のところ予定されていません」という。

そのために80年にわたるビートルの歴史が終わったと見ることもできるが、これには注釈が必要だろう。長寿モデルとして有名なのは、フォルクスワーゲン・タイプ1(通称オールドビートル)になるからだ。タイプ1は試験走行の後、1938年頃から生産が開始され、戦前の生産台数は小規模にとどまった。

この後、タイプ1の生産は第二次世界大戦後の1945年から本格的に立ち上がり、1960年代に入ると順調に伸びた。日本でも1953年からヤナセが販売を開始している。

フォルクスワーゲン・タイプ1は、改良を頻繁に行うことでフルモデルチェンジをせずに長期間にわたり生産を続けたが、空冷水平対向4気筒エンジンをボディの後部に搭載して後輪を駆動する方式は、初代モデルから生産終了まで一貫していた。

タイプ1がこの駆動レイアウトを採用したのは、第二次世界大戦前の技術では、前輪が操舵と駆動を兼任する前輪駆動には技術的な困難が伴ったからだ。

一般的な方式は、エンジンを前側に搭載して後輪を駆動するものだが、後輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトが必要になって車両重量も増える。だから当時の小型車には、エンジンを後部に搭載して後輪を駆動する方式が多かった。

そして1974年には、前輪駆動のフォルクスワーゲン初代ゴルフが発売されたので、フォルクスワーゲン・タイプ1は1978年にドイツ本国の生産を終えている。

この後もメキシコなどでノックダウン生産が行われ、タイプ1は2003年まで造られ続けた。クルマが急速に進化する激動の時代を、65年間にわたりフルモデルチェンジを行わずに生き抜いた。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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