VWビートルは終売 なぜフィアット500/ミニは生き残れている? 背景に存在価値

公開 : 2019.07.22 19:10  更新 : 2021.10.22 10:18

現代の存在意義はファッション性のみ?

ドイツでフォルクスワーゲン・タイプ1が生産を終えた後、同社の主力商品はゴルフになって進化を重ねた。

1997年に4代目ゴルフがワイドな3ナンバーボディで発売され、1998年には、同じプラットフォームを使うフォルクスワーゲンニュービートルが登場している。

タイプ1のオールドビートルは、後部にエンジンを搭載して後輪を駆動したが、ニュービートルはゴルフと同じ前輪駆動だからレイアウトが逆になる。

オールドビートルの丸みを持たせたボディ形状は、エンジンを後部に搭載して後輪を駆動する方式では必然的なデザインだったが、ニュービートルでは一種のファッションになった。

前輪駆動の場合、空間効率を重視すればゴルフのボディ形状になるから、ニュービートルの外観に必然性はないわけだ。

ニュービートルは1998年から2010年まで生産された。この後継車種として発売されたのが、ザ・ビートルであった。

プラットフォームは6代目ゴルフと共通だから、ニュービートルのフルモデルチェンジと考えれば良い。ザ・ビートルはフェンダーの張り出しが大きくなり、外観の雰囲気をオールドビートルに近づけたが、全幅は1800mmを超えている。

ボディが大柄な割に後席は狭めだ。外観をオールドビートルに似せるため、リアゲートを寝かせたから、頭上空間が狭い。前後席の間隔も少し近いため、後席の足元空間も不足して感じる。荷室容量も小さめだ。

つまりスタイル優先で実用性はいまひとつだから、ニュービートル、ザ・ビートルともに、クルマを理詰めで捉える欧州ではあまり支持されなかった。

フォルクスワーゲングループジャパンによると「ニュービートルとザ・ビートルの人気が最も高いのは北米市場になります。日本も比較的好調に売れる市場で、欧州に比べると、定期的に新車へ乗り替えてくださるお客様が多いです」とのことであった。

ザ・ビートルが生産を終えた背景には、欧州で高い評価を得にくいこともあった。

またニュービートルとザ・ビートルは、先に述べた通り、空間効率で不利な一種のファッションになる。ニュービートルの登場から数えて20年を経過すると、さすがに飽きられてくる面もあるだろう。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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