VWビートルは終売 なぜフィアット500/ミニは生き残れている? 背景に存在価値

公開 : 2019.07.22 19:10  更新 : 2021.10.22 10:18

ニュービートル登場時とは市場環境に変化

ニュービートルが登場した頃は、フォルクスワーゲンのラインナップは今に比べると少なかった。SUVのティグアンパサートオールトラックはもちろん、トゥアレグも用意されていなかった。

ミニバンのトゥーランとシャラン、上級セダンのアルテオン、コンパクトなアップもデビューしていない。

その代わり今のアップに近いサイズのルポ、ゴルフをベースにしたセダンのボーラはあったが、フォルクスワーゲンの選択肢は限られていた。

そのためにニュービートルの存在価値も高かったが、ザ・ビートルの時代に移り変わると、フォルクスワーゲンのラインナップも次第に増えてくる。ザ・ビートルの売れ行きは下がってきた。

また今のフォルクスワーゲンは、フロントグリルとヘッドランプを横長にデザインして共通のフロントマスクを採用するが、ザ・ビートルではこのアイデンティティも持たせにくい。丸型ヘッドランプを備えたオールドビートル風の丸みのある外観は、個性的と呼べる半面、少し浮いた存在になっていた。

ザ・ビートルのファッション性が、いろいろな意味で、今のフォルクスワーゲンのトレンドに沿わなくなってきたわけだ。しかも欧州の支持も乏しいから、生産終了に至ったと考えられる。

購入は最後のチャンス カブリオレ狙い目

ザ・ビートルはいよいよ販売を終えるが、「実は欲しいと思っていた」という読者諸兄もおられるだろう。購入を希望するなら、早めに判断した方が良いと思う。

そして在庫車を販売会社が登録した実質的に未使用の中古車を見ると、ザ・ビートルデザイン(278万円)が240万円くらいで売られている。

この価格では安いとはいえず推奨できないが、これから在庫車が長期化した場合には、もう少し価格が下がって中古車市場に流通する可能性もある。

特にオープンモデルのカブリオレは魅力が褪せにくく、数年後の売却額も下がりにくい。現時点でカブリオレは販売を終えているが、1台のクルマを長く使いたいユーザーにとって、ザ・ビートルは意外に注目されるクルマだと思う。時代の流れとはいえ、生産の終了は寂しい。

ところで、ふと思う。長寿モデルの「復刻車」という点では同じである、ミニやフィアット500は、なぜ今も生き残れているのだろう?

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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