ポルシェ911 詳細データテスト 良好な乗り心地 使い切れる適度なパフォーマンス 絶望的な遮音性

公開 : 2024.02.10 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

良路でのダカールのハンドリングは、どこかオールドスクール。そこが賛否両論を生みそうだ。通常の911に比べ、ダカールのステアリングには明らかな重さがある。そして、方向転換にやや遅れが出る。アジリティに欠けるわけではないが、背の低い911と異なり、指先の動きで向きを変えるような感じは薄い。

コミュニケーションも薄い。サスペンションが柔らかく、接地面が小さくなっているのだから仕方ない。それゆえ、ほかの911ほどには自信を持って飛ばすことができない。グリップも限られている。湿った路面ではアンダーステア気味だ。そして911の通例として、アンダーステアの後にはオーバーステアがやってくる。

ダカールはその名に相応しく、オールテレインタイヤ、80mm高い地上高、オフロード向けの走行モードを備える。ラリーモードではリアをトルクで流して、グラベルで横を向けるような運転もできる。
ダカールはその名に相応しく、オールテレインタイヤ、80mm高い地上高、オフロード向けの走行モードを備える。ラリーモードではリアをトルクで流して、グラベルで横を向けるような運転もできる。    JACK HARRISON

派手に飛び跳ねるような運転をしたわけではなくてもだ。というのもダカールは、基本的にしつけが良く、ズラリと揃ったシャシーの電子制御がきっちり効いているが、ルーズな感じも潜んでいる。厳格すぎるスポーツカーを好むユーザーには支持されないはずだ。

ところが、そうではないユーザーは好意的に受け止めるだろう。ダカールは911の気楽な派生モデルで、もしかしたらもっとも楽にポテンシャルを使えるポルシェかもしれないからだ。ロールはよく抑え込まれているが、クルマの状態を知り、次にどうなるか予測できるくらいには残されている。

また、通常の911ほど一体感を得られないステアリングも、オフロード前提であればじつにいい。これは最新の911だが、ブレーキの助けを得てまでノーズをコーナーに張り付けて走ることは求められていない。そこからパワーをかけて、穏やかに曲がっていくだけでこの上なくハッピーだ。

ラリーモードを選べば、トルク配分がかなりリア寄りになり、こうした挙動が強調される。古き佳き、というヤツを思い出させるが、あくまでそれの最上級だ。ダカールは穏やかながらも走らせ甲斐のある、なんなら非常にエキサイティングなモデルだ。なぜなら、サスペンションのトラベルを使い切ることは決してなく、どこでどれくらいその運動性の性格を引き出すかはドライバーに委ねられるからである。

記事に関わった人々

  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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