この見た目でナンバー付き! プロドライブ・ハンターへ試乗 ダカール・マシンを公道で 前編

公開 : 2022.04.03 08:25

2022年のダカール・ラリーで総合2位を掴んだハンター。2億3000万円超のオフローダーを、ロンドンで走らせました。

全幅2.3mの砂漠のフェラーリ

ロンドン中心部に、車載トレーラーが滑り込む。テールゲートが開き、艶のないサンドカラーのマシンが姿を現す。呆れるほど巨大なリアウイングは、取り外されていた。それでも、ひときわ目立つこと請け合いだ。

通行人が振り返る。自転車を漕ぐ人も足を止める。スマートフォンが次々に向けられる。好奇心旺盛なロンドンっ子だから、質問が飛んでくる。金額は?馬力は?スピードは?

プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ
プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ

プロドライブ社を率いるデビッド・リチャーズ氏の話では、このクルマは砂漠のフェラーリ。タミヤのラジコンバギーを、原寸大に大きくしたようにも見える。名前は、プロドライブ・ハンターという。

全長は4.6mほどで、BMW 3シリーズより短い。全高は1.85mで、レンジローバーより低い。しかし全幅は約2.3mもある。車載トレーラーにギリギリ収まる幅だ。オリジナルのハマーより100mmも広いと聞けば、ワイドさがご想像いただけるだろう。

ロンドンのハイド・パークに沿って伸びる道に、なんとか収まる。英国では、公道走行が許される大型トラックと、全幅はさほど違わない。左ハンドルで、ドアミラーもサイドウインドウも小さい。リアガラスは初めからない。

かといって、この場所が想定外ということはない。時折、派手に改造されたスーパーカーやSUVが闊歩している。そんなクルマだってワイルドで、周囲から浮いている。

冷笑する人もいるだろう。こんな市街地で、砂漠のフェラーリを運転する必要はない。でも、その飛躍ぶりが面白い。

2022年1月のダカール・ラリーで総合2位

ガルウイングのドアを開き、ハンターの車内へ身体を滑らせる。不安感が湧いてくる。

アクセルペダルを踏み始める前に、プロドライブ・ハンターについて簡単にご説明しよう。プロドライブ社といえば、GTレーサーやラリーカーを得意とする、レーシングカー・メーカー兼レーシングチーム。AUTOCARの読者なら、ご存知の方も多いはず。

プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ
プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ

ラリードライバーのセバスチャン・ローブ氏は、2022年1月に開催されたダカール・ラリーへワークス体制のハンターで参戦。総合優勝はトヨタハイラックス T1+に譲ったものの、見事に総合2位でゴールした。

今回のハンターは、その公道仕様のプロトタイプ。裕福な顧客へ向けた市販版だ。限定25台という生産台数の1台にカウントされ、レースチームのスポンサーになってくれた、バーレーン王室のガレージへ納められる予定だという。

市販版ハンターのお値段は、オプションを除いて150万ポンド(約2億3250万円)。すでに3台が売れたらしい。

地平線へ広がる荒野を突っ走るクロスカントリー・ラリーは、モータースポーツのなかで最もエクストリームなカテゴリー。パリ・ダカとして日本でも知られるダカール・ラリーは、その頂点に君臨するイベントだと思う。

ただし、ダカールと呼ばれていながら、近年はサウジアラビアの砂漠地帯がルートになっている。北アフリカは治安が悪いためだ。それでも、過酷さに変わりはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

この見た目でナンバー付き! プロドライブ・ハンターへ試乗 ダカール・マシンを公道での前後関係

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