メルセデス・ベンツEクラス 詳細データテスト ディーゼルセダン健在の証明 快適性は改善の余地あり

公開 : 2024.02.17 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

外観を見る限り、ミュンヘン発のライバルに大きな影響を受けることはなかったようだ。ワゴンも用意されるが、セダンモデルの3ボックススタイルは堅持され、ボンネットは長く、トランクリッドは明確に区切られている。全体的にラインはクリーンで、見栄えのいいディテールが多少加わるが、虚飾は極力廃されている。

当たり障りないグッドルッキング。アイボリーベージュに塗られたタクシーが、フランクフルト空港にズラリと並ぶ光景が目に浮かぶ。

EQEとはプラットフォームを共用しない新型Eクラス。パワートレインはガソリンとディーゼル、そしてPHEVというICE系のラインナップだ。
EQEとはプラットフォームを共用しない新型Eクラス。パワートレインはガソリンとディーゼル、そしてPHEVというICE系のラインナップだ。    JACK HARRISON

メルセデスは構造面のエンジニアリングをあまり詳細に語っていないが、これは先代モデルの発展版だからだ。5シリーズと違ってEクラスは、EVモデルとプラットフォームを共有する必要がなかった。また、ICEとPHEVのノウハウは、数十年にわたってほぼ完成させている。

とはいえ、PHEVのバッテリー置き場は相変わらず頭痛の種だ。ガソリンとディーゼルではわずかながら5シリーズを凌ぐトランクスペースが、PHEVでは優劣をひっくり返されてしまう。530eは520L確保している容量が、E300eは370Lしかないのだから。

Eクラスを擁護できるとすれば、そのバッテリー性能の優位だろうか。容量は総容量25.4kWh/実用容量19.5kWhで、EV航続距離は109km。対するBMWは22.1/18.7kWhで93kmだ。

ラインナップは先代ほどではないが、ガソリンもディーゼルも揃えてきた新型Eクラスのなかで、今回のE200dに搭載されるユニットはキャリーオーバーだ。メルセデスのモジュラーエンジンファミリーの一員であり、乱暴にいえばE450dに積む直6を2/3に切り詰めたものだ。過給は可変ジオメトリーターボで、エンジンとギアボックスの間には23psのモーターをサンドウィッチ。48Vマイルドハイブリッドとして、スターター/ジェネレーターと加速アシストを行う。

サスペンションに大きな驚きはないが、残念な話もほとんどない。フロントが4リンク、リアが5リンクで、PHEVを除くモデルには15mmダウンの実質的なスポーツサスペンションであるアジリティコントロールサスペンションが装着される。

ダンパーはパッシブの周波数選択式で、ドライバーがセレクトできるモードはないが、入力の周波数に応じたバルブ作動が得られる。理論上、ロールのような低周波数の動きでは硬くなり、荒れた路面からの突き上げのような高周波数に対しては和らぐという設計だ。

スチールコイルにアダプティブダンパーの選択肢はない。後輪操舵と合わせてエアサスが設定される市場もあるが、英国仕様には導入なし。十分な需要が見込めない、ということらしい。ただしワゴンは、リアのみセルフレベリング用のエアスプリングが備わる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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