アウディS1

公開 : 2014.12.02 23:40  更新 : 2021.10.11 09:11

■どんなクルマ?

コンパクトなボディに高性能なパワーユニット。その組み合わせが非常に魅力的なものであることを、改めて感じさせてくれたのが、アウディのS1/S1スポーツバックだ。ベースとなったのは、もちろんアウディのプロダクション・モデル・ラインナップでベーシック・ラインを担うA1/A1スポーツバックである。

S1というネーミングは、それだけでもアウディのファンには特別な響きを持って迎えられるものだが、個人的にはやはり、このS1のデビューによって、アウディの誇る4WDシステム、クワトロが、フル・ラインナップで提供されることになったことが嬉しい。クワトロが、きわめて有益なメカニズムであることは、すでに多くのモデルのステアリングを握って、それを確信しているからだ。

3ドアハッチバックのS1、5ドアハッチバックのS1スポーツバックと、2タイプのボディが選択できるS1だが、ボディ・サイズはいずれも全長で4000㎜以下とコンパクトだ。ホイールベースは2465㎜。この数字は、S1の走りに上級モデルのS3以上の俊敏さが演出されていることを容易に想像させる。日常的な使い勝手を考えれば、より魅力的なのは5ドアのS1スポーツバックということになるが、パフォーマンスを追求したいカスタマーには、より軽量な3ドアのS1の方が、やはり気になる存在ということになるだろうか。

フロントに搭載されるエンジンは、231psの最高出力と370Nmの最大トルクを誇る、1984cc仕様の直列4気筒DOHCターボ。ミッションはオーソドックスな6速MTのみの設定となる。ちなみにSトロニック仕様は、ドイツ本国においても、その設定はない。クワトロ・システムは、通常時の前後駆動力配分が60:40となる電子制御多板クラッチ式のセンターデフによるもの。走行状況に応じて、この配分は100:0から50:50にまで変化する。

エクステリアやインテリアのフィニッシュも、S1のキャラクターを主張してか、スポーティなフィニッシュでまとめられている。ただし必要以上の過激さを不要としているのは、アウディ流の演出。それでもホールド性に優れたドライバーズ・シートに身を沈め、フルスケールが280km/hとなるスピードメーターや、S1のロゴが入る8000rpmまでが刻まれるタコメーターに正対すると、それだけでも走りへの期待感は大きく高まるのだ。

■どんな感じ?

231psの最高出力を発揮するエンジンは、低速域から非常にトルクフルなフィーリングを感じさせてくれる。前でも触れたように、S1シリーズはオーソドックスな3ペダル・モデルだが、ヒルホールド機構も採用されているため、ゴー・ストップの繰り返しは、想像するほどに苦痛ではない。もちろん日本仕様では、2ペダルのSトロニックがベストな選択であることは確かだが、いわゆるホットハッチには、自分の意思でそれをドライブしているのだという感覚が必要なのかもしれない。

市街地などでの乗り心地は、ベースとなったA1シリーズと比較すると、確かに硬めだ。だが路面からの入力は、タイヤ、サスペンション、そして剛性感に富むボディによって見事に吸収され、コンパクトなボディからは想像できないほどの高級感のある乗り心地を、車速が高まるほどに演出してくる。短いホイールベースであることから、スタート前には半ば覚悟していたピッチングも、驚くほどに小さく感じられた。

ワインディング・ロードは、S1シリーズの走りが最も魅力的に感じられるシーンだ。S1にもアウディ・ドライブセレクトが標準装備され、それによってドライバーはさまざまな走行モードを選択することができるのだが、ここではやはり最もスポーティな「ダイナミック」を選択するのがベストだろう。エグゾースト・ノートやサスペンションの動き、あるいはアクセル・レスポンス等々は、それだけでよりエモーショナルな方向へと変化する。

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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